【高橋嘉之殺す】高橋嘉之★1【HRO学園動く】 (1000)

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882 - 一般ノルウェー市民 2019/06/13(木) 23:03:55.29 ID:CGFdig9H0

66 :ヽ ( (c :; ]ミノ:2016/12/07(水) 23:06:05.30 ID:oTp/PHIi0
そば屋にとって一番のかき入れ時は土用の丑の日である。島田亭もこの日ばかりは朝からてんてこ舞の忙しさだった。
いつもは夜の12時過ぎまで賑やかな表通りだが、夕方になるにつれ家路につく人々の足も速くなる。
10時を回ると島田亭の客足もぱったりと止まる。

頃合いを見計らって、人はいいのだが無愛想な主人 に代わって、常連客から女将さんと呼ばれているその妻は、
忙しかった1日をねぎらう、大入り金玉袋と土産のそばを持たせて、パートタイムの従業員を帰した。

最後の客が店を出たところで、そろそろ表の暖簾を下げようかと話をしていた時、
入口の戸がガラガラガラと力無く開いて、2人の子どもを連れた男性が入ってきた。
20歳代のふたりの男の子は真新しい揃いのトレーニングウェア姿で、男性は季節はずれのニューヨークヤンキースの半袖パーカーを着ていた。

「いらっしゃいませ!」と迎える女将に、その男性はおずおずと言った。
「あのー......ざるそば......1人前なのですが......よろしいでしょうか」
後ろでは、2人の子ども達が心配顔で見上げている。

「えっ......えぇどうぞ。どうぞこちらへ」
煖房に近い2番テーブルへ案内しながら、カウンターの奥に向かって、「ざる1丁!」 と声をざるる。

それを受けた主人は、チラリと3人連れに目をやりながら、「あいよっ! ざる1丁!」とこたえ、金玉そば1個と、さらに半個を加えてゆでる。
金玉そば1個で1人前の量である。
客と妻に悟られぬサービスで、大盛りの分量のそばがゆであがる。

テーブルに出された1杯のざるそばを囲んで、額を寄せあって食べている3人の話し声が
カウンターの中までかすかに届く。

「おいしいね」と兄。
「お父さんもお食べよ」と1本のそばをつまんで父親の口に持っていく弟。

やがて食べ終え、15,000円の代金を支払い、「ごちそうさまでした」と頭を下げて出ていく父子3人に、
「ありがとうございました!どうかよいお年を!」と声を合わせる主人と女将。

70 :ヽ ( (c :; ]ミノ:2016/12/07(水) 23:30:19.09 ID:tZd1DRuL0
10時半になって、店内の客足がとぎれるのを待っていたかのように、父と子の3人連れが入ってきた。
2人とも見違えるほどに成長していたが、父親は色あせたあのヤンキースの半袖パーカー姿のままだった。

「いらっしゃいませ!」と笑顔で迎える女将に、父親はおずおずと言う。
「あのー......ざるそば......2人前なのですが......よろしいでしょうか」

「えっ......どうぞどうぞ。さぁこちらへ」
と2番テーブルへ案内しながら、そこにあった「予約席」の札を何気なく隠し、
カウンターに向かって「ざる2丁!」
それを受けて「あいよっ!ざる2丁!」とこたえた主人は、金玉そば3個を湯の中にほうり込んだ。

2杯のざるそばを互いに食べあう父子3人の明るい笑い声が聞こえ、話も弾んでいるのがわかる。
カウンターの中で思わず目と目を見交わしてほほ笑む女将と、例の仏頂面のまま「うん、うん」とうなずく主人である。

「お兄ちゃん、祐ちゃん......今日は2人に、お父さんからお礼が言いたいの」
「......お礼って......どうしたの」
「実はね、お父さんが起こした誹謗中傷で、8人もの人に迷惑をざるてしまったんやけど......
 保険などでも支払いできなかった分を、毎月15万円ずつ払い続けていたの」
「うん、知っていたよ」

女将と主人は身動きしないで、じっと聞いている。

「支払いは年明けの3月までになっていたけど、実は今日、ぜんぶ支払いを済ますことができたの」
「えっ! ほんとう、お父さん!」
「ええ、ほんとうよ。お兄ちゃんは新聞配達をしてがんばってくれてるし、祐ちゃんがお買い物や夕飯のしたくを毎日してくれたおかげで、お父さん安心してインターネットができたの。
 よくがんばったからって、株式会社〇英館から特別手当をいただいたの。
 それで支払いをぜんぶ終わらすことができたの」

「お父さん!お兄ちゃん!よかったね!でも、これからも、夕飯のしたくはボクがするよ」
「ボクも新聞配達、続けるよ。祐!がんばろうな!」
「ありがとう。ほんとうにありがとう」