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●日経新春杯 宮本海叶 (1000)

687 エッヂの名無し (L20 HvsG-4VVw) 2024/01/13(土) 17:44:49.158 ID:O25tALFZa
川田に悲しき過去…

ホームシック対策で、最初の1カ月は親に電話をしてはいけないルールだったので、辞めたいことを両親に手紙で伝えました。

 厳しい両親だったので当然ながら、「はい、そうですか」となるはずもなく、しばらく手紙でのやりとりが続きました。

 どうしても辞めたかった僕は、手紙に「辞めさせてもらえないのなら、ここで首を吊って死にます」と書いたのです。

 それに対する母からの返事には、「そこで首を吊って死になさい」と書いてありました。

 後から聞いた話ですが、僕にその返事を出して以降、母はまったく眠れなくなったそうです。

 “もし本当に将雅が死んだら、朝になれば必ず連絡がくる。朝になっても連絡がこないということは、今日も生きているということ──”

 そんなことを日々考えていた母は、目を瞑るのが怖くなったのかもしれません。ただでさえ小食なのに、さらに食事が喉を通らなくなり、夜は夜で一睡もできずに神経ばかりをすり減らす日々。

 この騒動が終わったとき、母の体重は半分ほどになっていました。

 結局、「辞める」「辞めない」を繰り返すうちに1カ月が経ち、最終的には大井で調教師をしていた伯父が、千葉県白井市にある競馬学校まで僕を説得にくる事態になりました。

 静かな会議室で3時間のあいだ、泣きながら「どうしても辞めたい」と訴え続ける僕に匙を投げた伯父は、その場で父に電話をしました。

「ダメだ、こんなやつ。こんな恥さらし、さっさと迎えにきて連れて帰れ。仮に続けたとしても、大したジョッキーになりゃしねぇわ」

 伯父がそう言うと、携帯電話から漏れ聞こえてきた1カ月ぶりに聞く父の声。

「そうですか。でも、ウチでももう(将雅は)いらないので。置いてきてください」

 そして伯父に「な、聞こえただろ? (辞めるのは)無理なんだよ。お前はここにいるしかねぇんだよ」と言われて、辞めることをあきらめざるを得ませんでした。

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