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1野に咲く名無し@転載禁止[57aa4b95]2025/01/03 (金) 19:03:42.422ID:I8ZH5mBti主 1/18
「またきました」  「よろしくおねがいします」 https://i.imgur.com/ZD8ZHP3.png □おすすめ設定 1、専ブラのsikiをダウンロード(https://sikiapp.net/) 2、voicevoxをダウンロード(https://voicevox.hiroshiba.jp/) 3、プラグイン「voicevox_test」をダウンロード(https://sikiapp.net/plugins/) 4、プラグイン内「index.js」ファイルをテキストソフトで開き、「defaultSpeaker」の数字を0から47へ変更 5、sikiを起動し、左上の「三」ボタン→ツール→場所を開く→設定の場所を開く→pluginsフォルダ内に3をおく 6、sikiを再起動 7、voicevoxを起動し、そのまま放置 8、右クリック→スレッド操作→オートスクロール→読み上げを選択 9、スレURLをコピーしてsikiでスレを開く 10、右下▲クリックしてスレを読み上げ再生
2野に咲く名無し@転載禁止2025/01/03 (金) 19:03:58.415ID:I8ZH5mBti主 2/18
「冬」 「伊藤比呂美」
3野に咲く名無し@転載禁止2025/01/03 (金) 19:04:13.397ID:I8ZH5mBti主 3/18
 冬になると、私たちの回りは、根菜類ばかりになる。
4野に咲く名無し@転載禁止2025/01/03 (金) 19:04:31.004ID:I8ZH5mBti主 4/18
秋に穫れるイモ類やニンジン、葱を私たちは厳重に布でくるみ、冷たい場所に置いておく。
5野に咲く名無し@転載禁止2025/01/03 (金) 19:05:03.999ID:I8ZH5mBti主 5/18
たとえば地下室。階段をおりてゆくと、空気は途端に冷たく単純になる。 くらやみに慣れてくると、その棚いちめんに、でこぼこした麻の袋が置かれてあるのに気づく。
6野に咲く名無し@転載禁止2025/01/03 (金) 19:05:20.287ID:I8ZH5mBti主 6/18
階段の下もでこぼこの袋でいっぱいだ。懐中電燈にてらされて、袋は影をかかえている。ひょっとした拍子に、袋がもぞっと動いたような気もする。それほど、ならぶ袋たちは立体的にでこぼこである。
7野に咲く名無し@転載禁止2025/01/03 (金) 19:05:34.386ID:I8ZH5mBti主 7/18
私たちは二~三日に一ぺんくらいずつ、やさいを取りに来て袋をあける。
8野に咲く名無し@転載禁止2025/01/03 (金) 19:05:46.967ID:I8ZH5mBti主 8/18
 古い年のうちに、葱は食べつくされてしまう。葱はイモのようには長くもたないのだ。私たちは十二月にはいると、葱を急いで消費する。毎日、葱汁をのむ。
9野に咲く名無し@転載禁止2025/01/03 (金) 19:06:14.174ID:I8ZH5mBti主 9/18
十二月も半ばをすぎると、葱の青い部分からどろどろに溶けてくる。私たちは、残った葱をすべてさくんざくんに切り、あたらしくあけた袋からジャガイモを取って、いっしょくたに煮こむ。発酵した豆で調味されるこのスウプに、私たちは新鮮なイモのだしを味わって、満足である。
10野に咲く名無し@転載禁止2025/01/03 (金) 19:06:29.069ID:I8ZH5mBti主 10/18
それ以後、ニンジンとイモ類からヴィタミンをとり、四か月を暮らす。
11野に咲く名無し@転載禁止2025/01/03 (金) 19:06:49.164ID:I8ZH5mBti主 11/18
 雪というものがふらない冬である。 ただ、大地から、木々から、家々から、すべてが温度を失っていく。 空気が奇妙にひくく垂れこめて、景色は、空の下にぎっちり圧(お)しつぶされた様子を見せる。
12野に咲く名無し@転載禁止2025/01/03 (金) 19:07:14.125ID:I8ZH5mBti主 12/18
冬も深まるにつれ、澱(よど)むようだった空気から湿度がひいていく。そこいらいったいぱりぱりに乾き、痛いくらいまで冷たくかたまる。
13野に咲く名無し@転載禁止2025/01/03 (金) 19:07:40.830ID:I8ZH5mBti主 13/18
道は空洞になったように思われ、表面を固いもので、カン、と叩くと、音はカラコロカラコロ転がっていってしまう。道の行きどまりに立つ壁にぶつかってはね返る音が聞こえる。
14野に咲く名無し@転載禁止2025/01/03 (金) 19:08:23.673ID:I8ZH5mBti主 14/18
 そのころ、〈じんのそり〉とよばれる北西の風が吹くようになる。息のねににた絶えまない風は、なにもない路上に小さなたつまきをうみ、乾いた土や木のかけらをあつめ、私たちの衣服のすきまからはいりこんで皮膚をかすめる。
15野に咲く名無し@転載禁止2025/01/03 (金) 19:09:11.115ID:I8ZH5mBti主 15/18
〈じんのそり〉という名も、冬の尽きるころ=尽(じん)に吹く刃物のような風という意味だろう。あるいは、刃=じんを補って、そりをつけたのかもしれない。
16野に咲く名無し@転載禁止2025/01/03 (金) 19:09:23.669ID:I8ZH5mBti主 16/18
しかし、すべてを吹きはらう風は空を美しくする。昼間は蒼々として高いところにつづき、夜は星で埋めつくされる。冬には青白く瞬きの激しい一等星が多くなる。
17野に咲く名無し@転載禁止2025/01/03 (金) 19:09:29.089ID:I8ZH5mBti主 17/18
 私たちは、この寒さを〈あざやぎ〉とよんで、厚い毛織のオーヴァを着て道をあるく。
18野に咲く名無し@転載禁止2025/01/03 (金) 19:10:01.936ID:I8ZH5mBti主 18/18
「ありがとうございました」 「また来ますね」 https://i.imgur.com/ZD8ZHP3.png