3月3日の昼下がり。
ぴりお&岩くんとアルは、原っぱに寝そべり空を見上げていた。
空はすっかり晴れていて、春が近づいているのを感じさせられる。
「今日は、いつもに増して心地の良い日ですね」
「空気がおいしくて、さいこうだ~
あっそうそう、アルさん」
「何ですか?」
「前聞いたんだけどさ、今日はひな祭りってのがあるらしいよっ」
「ああ、人間の行事ですね。飾り付けをしたり、美味しいものを食べたりするらしいですよ」
「食べ物かぁ。いいな~ぼくも食べてみたいな」
そんな言葉を交わしながら、二人はのんびりと過ごしていた。
【マスコットSS】アルぴりうんちゅのひな祭り
10 レス · dat原文
「あれ…?」
「どうかしましたか?」
「なんか、いいにおいがするよ」
ぴりおは立ち上がり、辺りをくんくんと嗅いでみる。
「たぶんあっち、お山の方からするよ」
「山ですか。何かお店でもあるんでしょうかね」
「気になるよ~ぼく行ってこようかな」
「それなら私も、見に行くとしましょうか」
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「んしょ、とうちゃく~」
「おやおや、これは何でしょうか…」
「わあ~すごいや」
山のふもとに着いた二人。
高くはない山だが、彼らにとってはとても大きなものだ。
そしてその目の前には、ひな壇がある。
それもただのひな壇ではない。とても長く、見上げれば山の上までずっと続いてそうだ。
「匂いの方はどうでしょうか」
「やっぱり上の方からするよ。でも、ここをのぼるのは…」
「流石にここを登るには、私達には厳しそうですね。他の緩やかな道を探しましょうか」
と、二人が離れようとした時だった。
「オッス!」
「わ、びっくりした!」
「貴方は…うんちゅくん。どうも」
そこに現れたのは、うんちゅだった。
彼もこの匂いに惹かれてやってきたのだろうか。
「かくかくしかじか…というわけです」
「なるほどっス。上に行くなら、いい方法があるっスよ」
「なんだろ?」
うんちゅはそう言うと、両手を差し出してきた。
「オラはこのまま、上まで飛んでいくつもりだったっス。
それなら二人はこの腕につかまるといいっス」
そう、うんちゅは妖精。
その羽を使って飛んでいけば、全員で上に着くことができそうだ。
「でも、重くないでしょうか?」
「オラは農奴の同位体。重さも同じくらいだから平気っスよ!
ささ、遠慮なくどうぞっス」
「じゃあぼくも、おねがい!
…わわっ」
三人の体がふわっと宙に浮く。
そのままうんちゅは高度を増していき、頂上へと向かう。
ぴりおとアルは、つかの間の空中を楽しんでみる。
「すごいな、本当に空をとんでるよ~たのしいな」
「私もこんな体験をするのは初めてです。
これは、実に興味深いです…」
「におい、もっとしてきたよ!
お山の上にはなにがあるんだろうな~」
「そろそろ到着っスよ!」
三人が頂上に着くと、そこには楽しそうな景色が広がっていた。
食べ物の屋台に飾り付け。たくさんのぷゆゆ達で賑わい、梅の花もたくさん咲いているようだ。
「わ、楽しそう!
これって…お祭り?」
「そのようですね。恐らく、雛祭りのイベントではないかと」
「すごいっスね~
おや、あっちから誰かが来てるっス」
カランカラーン!
突然、会場に大きな音が鳴り響く。
そして同時に、ベルを持ったぷゆゆが駆け寄ってきた。この音の主は彼だろう。
「お、おめでとうございますぷゆ!
あなたは記念すべき、今日1000人目の入場者ですぷゆ!」
ぷゆゆが指したのは、ぴりお。
「えっ、ぼく!?」
「幸運なお客様にはプレゼントを用意いたしましたぷゆ。
こちら!」
そう言ってぷゆゆが取り出したのは、ファーのついた大きなコートだった。
いかにも高級そうな質感で、とても暖かそうなコートだ。
しかし、これはどう見ても…
「…人間用ですね」
「でも、もらえるもんはもらっておくといいっスよ~」
「うんっ、ありがとうぷゆゆさん!」
「ほ、本当におめでとうございますぷゆ。
それでは、この農園巨大ひな祭りをごゆっくりお楽しみくださいぷゆ!」
「わーい!」
小走りで会場に向かっていくうんちゅとぴりお。
アルもついていこうとするが、ふと先程のぷゆゆを見ると、何やら独り言を話してるのが聞こえる。
「おかしいぷゆ。本当なら…」
何かひっかかるが、ひとまず二人の元に向かうのだった。
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早速三人はイベントを回り出した。
最初に向かったのは、食べ物の屋台。
「くんくん…さっきまでしてたのは、このにおいだ!」
「おや、これは…」
ひな祭りのものにそうじゃないもの。たくさんの食べ物が並ぶ中でも、ぴりおが惹かれたのは…オニオンスープ。
「店員さん、これください!
…うん、おいしいよ!」
「……私はこれ、定番の雛あられを少しいただきます。
ネズミにも丁度いいサイズです」
「お、甘くて美味しいっスよね。
オラはひし餅、この柔らかさがたまらないっスね~
さあ、腹ごしらえしたら、次行くっスよ!」
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次にやって来たのは、豪華な飾り付けがなされたとりわけ大きなひな壇。
「わあ~すごいりっぱだなぁ」
「しかし、人間って面白いですよね。優れた種族なのにわざわざネズミのサイズまで降りてくるなんて…」
「ほらほら、写真撮るっスよ!」
喋りだしたアルがうんちゅにつまみ上げられる。
そうして置かれたのは、ひな壇に空いていたスペース。
「あわっ、何を…そしてそのカメラは一体」
「ちょっと借りてきたっスよ。
…はい、チ~ッス!」
アルは言われるがままにピースをし、カメラのシャッターが押された。
撮った写真をその場で眺める三人。
「うぅ…私ともあろうものが人間らしいことなど」
「でも、すごいきれいだよ!」
「表情もすてきっス」
そう言われたアルはもう一度写真を見る。
人形と肩を並べ写ってる自分の姿に、なんとも言えない気持ちを覚えた。
楽しく遊んでいる間に、もう太陽が沈む頃。
ぷゆゆ達も帰り始め、辺りは静かになっていく。
「楽しかった!でも、そろそろ帰らないとかなぁ」
「そうですね。我が家が待っています」
「オラも疲れたから、一緒に帰ろうっス」
三人は山を降り始める。
しかしただでさえ夕方で暗い中、正しい帰路がわからず右往左往。
そうこうしているうちに、辺りはすっかり暗闇に。
「ねえ、暗くなってきたよ…」
「そうっスね…もう来た道もわからないっス」
「困りました、これでは進むのも危ないですね。
…これは俗に言う、遭難ってやつでは」
遭難。その事実が、三人に重くのしかかる。
「…じゃあ急いでおりなきゃっ」
「待ってください。この暗闇の中での行動は危険です」
「うう…あっうんちゅさん、さっきみたいにとんでもらうのは…」
「もうヘトヘトっス~それに、寒くて体がこわばるっス」
「まだまだ寒い時期の山です。このままでは三人とも凍えてしまいますね」
「どうしよう、こわいよ…」
「幸い農園の山なので、安全は確保されています。
ここで朝を待つか、頂上を目指し助けを求める手もあるでしょうか。でも皆疲れてますし…
ううっ、まずはこの寒さをどうにかできれば良いのですが」
その時だった。
近くの草むらから、ガサガサと音がするのが聞こえる。
「わわっ!」
「誰かがいるのかもしれません。行ってみましょう」
三人が向かってみると、そこには誰もいない。
だが、地面を見ると何かが置いてあった。
「これは、カイロっスか!?
しかもたくさんあるっス」
「これはまさに渡りに船ですね。こんなに都合良いことが…おや?」
ネズミはとても耳が良い。
微かな音がした方をアルは振り向く。
ほんの一瞬だが、誰かの姿が見えた。
「あれはまさか…でも、とりあえずこのカイロを使って暖まりましょう」
「わ~い!ぽかぽかだ」
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気を取り直して、早速3人は暖を取り始める。
しかし問題はそれだけではないようだ。
「これで多少は寒さを凌げますが、やはり夜を越すには不十分です。
頂上へ向かうのに賭けるか、または暖を取る良い方法があれば良いのですが」
「あの、これって…あったかくないかな?」
ぴりおが見せてきたのは、先ほど景品でもらったコート。
彼には重いはずだが、ここまで大事に引きずりながら持ってきたようだ。
「…それは良いですね。使ってみましょう」
アルはそう言うと、辺りから木の枝を集めてくる。
器用に枝とコートを組み合わせると…テントが完成した。
とても小さいが、この三人にとってはぴったりのサイズのようだ。
「わぁ~すごいや!」
「でもでも、なんか風で吹き飛びそうっスね」
「確かに…そうだ、そうしたらこうしましょう」
そう言って、アルが手に取ったのは…
「あっ、岩くん!!」
「この子を重石にするのはどうでしょうか。
きっと良い仕事をしてくれますよ」
「しごとかぁ…うん。おねがいする!」
岩くんを使い、即席テントを無事に固定することができた。
「皆体力も尽きてます。むやみに動かず、一旦休息を取るのが得策ですかね…」
「腹ごしらえしておいてよかったっス」
「ぼく、ねむくなってきたよ…」
「オラもっス…」
疲れきった三人は身を寄せ合いながら、眠りに落ちるのだった。
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「むにゃむにゃ…はっ!」
「おはようございます。ひとまず皆無事なようで良かったです。
さて、帰路を探すとしましょうか」
「あ、あれを見るっス!」
うんちゅが指さした先には、山の下から上まで続くあの大きなひな壇があった。
これを辿っていけば無事に下まで降りられそうだ。
「こんな近くにあったなんて…暗いと気づかないものですね」
「よかった…帰れる!」
「もうすっかり元気モリモリっス。またオラが運んでもいいっスよ~」
「ほんと?いきたい!」
「ならば、私もお願いしましょう」
再びうんちゅに揺られながらの帰り道。
アルは遠ざかるひな壇を見つめ、思いを巡らせる。
「…雛祭りには幸福や息災の願いが込められていると聞いた事があります。
人間というものはやはり不思議で、面白いものですね」
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「わーい!こわかったけど、みんなですごせて楽しかったよ!」
「私も貴重な経験になりました。もっとも、次回からは注意を払うべきですが…」
「オラも楽しかったっス!アルとぴりおに岩くん、本当にありがとうっス」
「またあそぼうね!
あっ、そういえば、これどうしよう…」
ぴりおがここまで大事に持ってきた、あのコート。
やはり、小さい彼らの身には余る代物だ。
「リサイクルショップなんかはどうでしょうか。多少ですが、お金になります」
「リサイクルショップかぁ…そうしよう!
だれかがもらってくれたらいいな~」
「そうですね…それに、これを欲しかった人がきっといるはずです」
あの夜、一瞬アルが見た姿。
それは間違いなく…麦わら帽子をかぶっていた。
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数日後のこと。
「いらっしゃいませぷゆ……っ!?」
とあるリサイクルショップを訪れる、誰かの姿があった。
「その''ふさふさ''したコート、買わせていただきますよ」
寝てるぴりおたち見守りたい🥺
ほのぼの路線✊😳
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いい話だ☺
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みんな読んでくれてありがとう☺
岩くんに活躍シーンがあってよかった🥺
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ほのぼのだけどオニオンスープとかいうさり気ないぴ虐ぷゆじゃなきゃ見逃しちゃうね
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