さんUぼっち・ざ・ろっく!部🎸 (501)

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124 - 名無しさん 2023/02/11(土) 21:11:37 ID:qAL-A9E30D-7362

 ――あの女は決して私のあとをつけているのじゃない。それどころか私の存在などにてんで気がついていないのだ。たといまともに私の顔を見ても私さえだまっておれば、彼女は私だと信じないだろう。本郷の自宅で留守居をしているはずの私が桜木町行きの電車に乗っているというようなことは、あの女の、ことによると一般に女というものの知力や想像力では解すべからざることだ。懐中鏡だって、何も私の行動を監視するためにとり出したのじゃない。今日のような蒸し暑い、汗のだくだく流れる日に、懐中鏡で自分の顔をうつして、白粉がとけるのを心配するのは、すべての若い女に、ごく普通の身だしなみで、東京から横浜まで一度も懐中鏡を見ないような女があったら、それこそ不自然じゃないか。それに、これは最も根本的な点だが、あの女がみな子であることは有り得ない。断じて有り得ない――。