354 ゆぱー! 2015/12/15(火) 22:47:22 ID:yiRh3LKQ
第3 当裁判所の判断
1 証拠(甲4,5)によれば,請求原因(1)アが認められ,同イは当事者間に争いがない。
2 証拠(甲1)によれば,請求原因(2)が認められる。
3 請求原因(3)について
(1)法4条1項1号が定める「侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき」とは,発信者が有するプライバシー及び表現の自由の利益と被害者の権利回復を図る必要性の調和という観点から,権利侵害がされたことが明らかであることを必要とした要件であるから,権利が侵害されたことに加え,違法性阻却事由の存在をうかがわせるような事情が存在しないことを,原告において主張,立証する必要があると解するべきである。
(2)本件投稿は,「裁判クレーマーとは,Aさんの自称」と摘示している。この摘示は,一般の閲覧者の普通の注意と読み方を基準にすれば,原告が自ら裁判クレーマーと名乗っているとの事実を摘示したものと理解できるものというべきであり,裁判クレーマーという表現には,裁判における正当な権利主張の形式を取りながら,苦情や言いがかりを執拗に繰り返している者という印象を一般閲覧者に与えるものというべきであるから,本件投稿は,原告の社会的評価を下げるものとして,名誉毀損に当たるというべきである。
(3)そして,証拠(甲4,5)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成25年9月に,原告自身のブログ「○○○○○○○○○○」中で,原告の解雇に関して東芝に提出した質問が,株主総会にて取上げられたが,東芝は,会社側は和解をしようとしたが原告が和解を受け入れず上告しているため,質問に答えられない旨回答するとともに,原告が勝手に裁判をしていると強調したような発言をしたこと,原告は東芝が過失を認めることを和解の条件にしていたところ,東芝が過失を認めないために2年にわたる和解交渉が決裂したのであり,東芝は原告の質問とは違う回答をして,原告を裁判クレーマー扱いしたこと等を記載したこと,原告は,本件裁判につき上告し,平成26年3月24日、最高裁判所は,原判決中,損害賠償請求及び見舞金支払請求に関する原告敗訴部分を破棄し,同部分につき,東京高等裁判所に差し戻すと判断したことが認められる。
原告の上記のブログの記載は,原告の立場から見た本件裁判の経過につき述べるとともに,東芝が原告を裁判クレーマー扱いしたと憤慨している内容であり,本訴に提出された証拠からは,原告自身が,裁判クレーマーと自称した事実はないことが認められるから,本件投稿は真実であるとは認められず,ほかに本件投稿につき違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情は存在しない。
(4)したがって,本件投稿は原告の名誉を毀損するものというべきである。
4 請求原因(4)ないし(6)について
請求原因(5)のうち,別紙情報目録記載のIPアドレスが投稿日時において,被告が,インターネットサービスプロバイダとしてインターネット接続サービスをその会員に提供するについて,特定の会員であるIPアドレス使用者に貸し出したものであったことは当事者間に争いがなく,証拠(甲2,3)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,被告が管理する電気通信設備を用いて,電気通信の送信の用に供される他人の通信を媒介するから,法4条1項の開示関係役務提供者に該当する(請求原因(5)(6))。
そして,弁論の全趣旨によれば,原告は本件投稿をした者に対し,権利侵害を理由として不法行為に基づく損害賠償の準備をしており,そのためには,本件投稿をした者に係る発信者情報が必要であることが認められる(請求原因(4))。
5 よって,原告の請求は理由があるから認容することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第17部
裁判官 今井和桂子