【唐澤貴洋殺す】雑談★13【ボタンエビ】 (1001)

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986 無名弁護士 2017/06/21(水) 11:18:12.12 ID:sm6nl2yn0

「ところでY先生はどうなんです」と客が言う。「《リャマニー》をなさる方もおられるようですが?」

 ――リャマニー?

 カラニーの謎が解けぬうちから、新たな謎が生まれてしまった。

「いやあ僕なんて」、照れくさそうに頭をかきながらYくんは言う。「いまだに慣れてなくて。その言葉を聞くだけで、つい気恥ずかしくなっちゃいますよ」

 はてリャマニーとはなんであろうか、と内心思いつつも当職は顔色に出さぬようつとめ、取りあえず取り急ぎ人生の先輩として発言しておく。

「うんYくん、それは当職が思うにまだまだきみの度量が足りないのだね。リャマニー、大変結構なことじゃあないか。Yくんも頑張って当職のような弁護士を目指せナリ。
 まあ当職と違って、きみでは才能の壁に阻まれるだろうけれど……それでも、そこそこの有能にはなれるナリよ?」

「さすがだなあKさんは」

「うむうむ、もっと褒めたまえ。カラニーでもして、精神を鍛えるべきだね、うん」

 ナリナリ、とにやけながらこたえたとき、客がそそくさと立ち上がった。気のせいか前かがみである。

「すみません、それでは私はこれで」

「あれ、もうお帰りなのですか」、内心舌打ちしながら言う。あと少しで相談料をふんだくれたのに。

「ええ。先生のお口から直に「カラニー」ときいていると、どうも辛抱たまらなくなってきまして。これから家でカラニーと洒落込みます」

「ああそうですか、カラニーですか」、当職は大きくうなずいてみせる。「心ゆくまでなさい」

 我ながら実に大物らしい言動である。
 客が去っていくと少々疲れを感じた。時計を見ればもう2時間も仕事をしている、これでは疲れてしまうのも当然だ。

「Yくんや、当職はちょっと休むからあとは頼むよ」

 適度な休息が寿命を伸ばすのは常識である。当職は応接用ソファに横たわって昼寝をすることにした。
 しかし辛抱しにくくなるとは、カラニーとはなんなのであろう。ITと辛抱が関係する単語とはいったい……。

 考えながらも、うとうとといい塩梅に眠りに落ちた頃合いに、
「いるか無能!」と威勢の良い声が飛び込んできた。
 当職の知りうる限りこのような罵声とともにやって来る人間はひとりしかいない。