338 エッヂの名無し (L20 XkVF-68M1) 2025/07/05(土) 23:07:39.686 ID:UUujSir1s
43 エッヂの名無し (L20 7H3x-48eC) 2025/07/04(金) 21:34:30.119 ID:IAG5.WOlG
「終わりのキャッチボール」
2025年7月5日。
明日、日本は滅びると言われている。
人々が姿を消し始めた都市の片隅、幕張のスタジアムに2人の姿があった。
千葉ロッテマリーンズ、種市篤暉投手と吉井理人監督。
照明も音もないグラウンドに、2人の影が落ちる。
「最後に、ちょっとだけ投げてもいいですか」
種市がそう言うと、吉井はゆっくりミットをはめた。
「ええで。投げてみ」
低く穏やかな声で、吉井が答える。
ボールが空を切り、ミットに収まる。
一球、また一球。
言葉は少ない。ただ、確かなテンポでボールが往復する。
「俺、野球しかやってこなかったですけど、後悔してないです」
種市がぽつりとつぶやく。
「そらそうや。お前はようやった。立派な投手やったで」
吉井はマスク越しに微笑んだ。
風が通り抜け、スタンドの階段に小さな紙くずが舞う。
スタジアムは静かで、どこまでも広かった。
ボールが止まり、2人はベンチに座った。
帽子を外し、空を仰ぐ。雲一つない青空だった。
「明日、監督はどこにいますか?」
「ワシか? ここやな。最後までこの球場におる。監督としてな」
「……そうですか」
種市は静かに笑った。
空の色が少しずつ赤く染まっていく。
その景色を、2人は黙って見つめていた。
明日、世界は終わる。
けれど今日、ここに確かに野球があった。
翌日、特に何も起こらず千葉ロッテマリーンズは今季18度目の完封負けを喫した