307 - 堤防の砂【忍法帖ID:9642e25b0f23b0f6ed1e8f0d106a21b8】 (スッップM SDNy-DZmm) (sage) 2023/11/27(月) 23:32:59.19 ID:dMrAwWnC
商店街の街並みが切り取った
縦長のフレームの中で、
彼女は控えめに笑っている。
手のひらに太陽をのせて、
子どもっぽいねと笑っている。
当人もまだ、子どもだというのに。
小さな肩に圧しかかる期待と、
胸に灯る闘志と、
うすく固く蓋をする諦観。
それらすべてをひっくるめて、
あの子は笑う。
だから、思うのだ。
太陽ひとつ。
直径約140万キロメートルの、
世界で1番大きい金メダルは、
彼女の手にこそ相応しい。
彼女に願う。
どうか笑っていてほしい。
この時だけでも、無邪気に。
空に願う。
あの子が太陽を掴む時、
そのやわい手が焼けてしまわぬよう、
包んでやれるのが、自分でありますように。