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20 がん患者さん 2016/10/24(月) 09:12:23.17 ID:rXy1I+enI

ネロが鬱陶しそうにオレの手を払いのける。
「よせよ。お前は何も考えずに突っ走るところがある。無駄な戦いは避けたい」
 ネロは瞼を閉じて肩を竦める。

 オレは頭の後ろで手を組んだ。
「悪かったな、何も考えてなくて。今回は、お前に助けられたな」
 ネロの背中越しに、魔物らが黒こげになっているのを見て、オレは口笛を吹く。

「ねぇ。こんなとこにラウル古代遺跡があるわけ? 見たとこ森が広がってるし、でっかい湖はあるし。何もないじゃない」
 ネロのインカムに、ノイズ交じりでミサから無線が入る。

 お前は暢気でいいよな、ミサ。オレとネロは散々な目に遭ったってのに。オレは愚痴を零す。
 オレは空を仰いで額に両手をくっつけ、お気楽なミサを探す。
 オレはミサを探すのを諦めて頭の後ろで手を組み、樹の影に消えてゆく魔物らを見送る。
「あいつらも諦めてくれたし、さっさとこんなとこ離れようぜ」
 オレは肩を竦めて歩く。

 ネロの横を通り過ぎようとした時、ネロは手でオレを制す。
「待て、奴らの様子が変だ。油断するな、カイト」
 ネロは何匹か残った魔物を見回した後、自分が倒した魔物の前にいる、生き残った魔物たちを睨み据える。

「今度はなんだよ」
 オレは舌打ちして、斜め掛けの鞘に収めた剣の柄に手をかけ、残った魔物たちを見回す。
 こいつら、何しようってんだ?

 オレたちの前から立ち去らずに残った魔物は、なんと黒こげになった魔物の死体を喰い始めた。
 魔物は喧嘩しながら、魔物の死体を貪る。生々しい咀嚼音が聞こえる。

 信じられない光景を目の当たりにして、オレは思わず後退る。
「!? ど、どうなってんだよ」
 オレは手に変な汗を掻いていた。

 ネロがオレを制した手をゆっくりと下す。
「さあな。嫌な予感がする」
 ネロは緊張した声音で、腰に巻いたホルスターのオートマチック銃の柄に手をかける。
 ネロは余った手でジャケットのポケットに手を突っ込んだ。さっきの武器を使うのだろうか。