彡(゚)(゚)「今日は…やきうが…」 (36)

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7 それでも動く名無し@転載禁止(主) 2022/09/09(金) 00:06:22.13 ID:HYcxX1Pj0

「楽しかったけど、成績はあんまりやな。もっと打たへんと」
俺もだよ。
「ホームランダービーもダメダメや、一本ってなあ」
俺もだよ。
「試合も犠牲フライだけやったし…」
俺もだよ。
「俺らめっちゃ同じやな!」
そうだね、運命かも。
「なあ、…昨日のあの企画の時やけどさ」
ん?
「俺に好きって言われて嬉しかった?」

「めっちゃ赤くなってたやろ。わかってたで」

「俺もドキドキしてたんやけどな、顔に出ないタイプやから」
「なあ、着いちゃう前に言うで、いや…やっぱ言わへん、その」
…なんだよ。
「ごめん、我慢できひん」
あいつは俺の前に来て、少しかがんで、キスをした。
硬い顎髭が顔に当たっている。
今まで見たことのないくらい近くに、顔の肌が目に入る。
かっこいいな。
もう少し唇は硬いのかと思ってた。
一瞬だった。
「すまん、今日だけな、忘れて」
俺はバスに着いて別れるまで何も言えなかった。
あいつはオールスターの間、何を考えていたんだろう。
何を思いながら野球をしているのだろう。
俺を見た時、俺と話している時、何を思っているのだろう。
それを知れる時が来るのだろうか。
松山の夜は依然暑く、頬に一筋の汗が垂れるのを感じた。