20 それでも動く名無し@転載禁止 2022/11/05(土) 22:25:39
た。今度はどうだとまた山嵐が聞いた。うんと云ったが、うんだけでは気が済まなかったから、この学校の生徒は分らずやだなと云ってやった。山嵐は妙みょうな顔をしていた。
三時間目も、四時間目も昼過ぎの一時間も大同小異であった。最初の日に出た級は、いずれも少々ずつ失敗した。教師ははたで見るほど楽じゃないと思った。授業はひと通り済んだが、まだ帰れない、三時までぽつ然ねんとして待ってなくてはならん。三時になると、受持級の生徒が自分の教室を掃除そうじして報知しらせにくるから検分をするんだそうだ。それから、出席簿しゅっせきぼを一応調べてようやくお暇ひまが出る。いくら月給で買われた身体からだだって、あいた時間まで学校へ縛しばりつけて机と睨にらめっくらをさせるなんて法があるものか。しかしほかの連中はみんな大人おとなしくご規則通りやってるから新参のおればかり、だだを捏こねるのもよろしくないと思って我慢がまんしていた。帰りがけに、君何でもかんでも三時過すぎまで学校にいさせるのは愚おろかだぜと山嵐に訴えたら、山嵐はそうさアハハハと笑ったが、あとから真面目まじめになって、君あまり学校の不平を云うと、いかんぜ。云うなら僕ぼくだけに話せ、随分ずいぶん妙な人も居るからなと忠告がましい事を云った。四つ角で分れたから詳くわしい事は聞くひまがなかった。
それからうちへ帰ってくると、宿の亭主ていしゅがお茶を入れましょうと云ってやって来る。お茶を入れると云うからご馳走ちそうをするのかと思うと、おれの茶を遠慮えんりょなく入れて自分が飲むのだ。この様子では留守中るすちゅうも勝手にお茶を入れましょうを一人ひとりで履行りこうしているかも知れない。亭主が云うには手前は書画骨董しょがこっとうがすきで、とうとうこんな商買を内々で始めるようになりました。あなたもお見受け申すところ大分ご風流でいらっしゃるらしい。ちと道楽にお始めなすってはいかがですと、飛んでもない勧誘かんゆうをやる。二年前ある人の使つかいに帝国ていこくホテルへ行った時は錠前じょうまえ直しと間違まちがえられた事がある。ケットを被かぶって、鎌倉かまくらの大仏を見物した時は車屋から親方と云われた。その外今日こんにちまで見損みそくなわれた事は随分あるが、まだおれをつらまえて大分ご風流でいらっしゃると云ったものはない。大抵たいていはなりや様子でも分る。風流人なんていうものは、画えを見ても、頭巾ずきんを被かぶるか短冊たんざくを持ってるものだ。このおれを風流人だなどと真面目に云うのはただの曲者くせものじゃない。おれはそんな呑気のんきな隠居いんきょのやるような事は嫌きらいだと云ったら、亭主はへへへへと笑いながら、いえ始めから好きなものは、どなた