( ^ω^)顔文字で馴れ合うスレ(´・ω・`)☆FAXお断り (109)

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22 それでも動く名無し@転載禁止 2022/11/05(土) 22:25:47

日までは数学と骨董で蕎麦を忘れていたが、こうして看板を見ると素通りが出来なくなる。ついでだから一杯食って行こうと思って上がり込んだ。見ると看板ほどでもない。東京と断ことわる以上はもう少し奇麗にしそうなものだが、東京を知らないのか、金がないのか、滅法めっぽうきたない。畳たたみは色が変ってお負けに砂でざらざらしている。壁かべは煤すすで真黒まっくろだ。天井てんじょうはランプの油烟ゆえんで燻くすぼってるのみか、低くって、思わず首を縮めるくらいだ。ただ麗々と蕎麦の名前をかいて張り付けたねだん付けだけは全く新しい。何でも古いうちを買って二三日にさんち前から開業したに違ちがいなかろう。ねだん付の第一号に天麩羅てんぷらとある。おい天麩羅を持ってこいと大きな声を出した。するとこの時まで隅すみの方に三人かたまって、何かつるつる、ちゅうちゅう食ってた連中れんじゅうが、ひとしくおれの方を見た。部屋へやが暗いので、ちょっと気がつかなかったが顔を合せると、みんな学校の生徒である。先方で挨拶あいさつをしたから、おれも挨拶をした。その晩は久ひさし振ぶりに蕎麦を食ったので、旨うまかったから天麩羅を四杯平たいらげた。
 翌日何の気もなく教場へはいると、黒板一杯ぐらいな大きな字で、天麩羅先生とかいてある。おれの顔を見てみんなわあと笑った。おれは馬鹿馬鹿しいから、天麩羅を食っちゃ可笑おかしいかと聞いた。すると生徒の一人ひとりが、しかし四杯は過ぎるぞな、もし、と云った。四杯食おうが五杯食おうがおれの銭でおれが食うのに文句があるもんかと、さっさと講義を済まして控所へ帰って来た。十分立って次の教場へ出ると一つ天麩羅四杯なり。但ただし笑うべからず。と黒板にかいてある。さっきは別に腹も立たなかったが今度は癪しゃくに障さわった。冗談じょうだんも度を過ごせばいたずらだ。焼餅やきもちの黒焦くろこげのようなもので誰だれも賞ほめ手はない。田舎者はこの呼吸が分からないからどこまで押おして行っても構わないと云う了見りょうけんだろう。一時間あるくと見物する町もないような狭せまい都に住んで、外に何にも芸がないから、天麩羅事件を日露にちろ戦争のように触ふれちらかすんだろう。憐あわれな奴等やつらだ。小供の時から、こんなに教育されるから、いやにひねっこびた、植木鉢うえきばちの楓かえでみたような小人しょうじんが出来るんだ。無邪気むじゃきならいっしょに笑ってもいいが、こりゃなんだ。小供の癖くせに乙おつに毒気を持ってる。おれはだまって、天麩羅を消して、こんないたずらが面白いか、卑怯ひきょうな冗談だ。君等は卑怯と云う意味を知ってるか、と云ったら、自分がした事を笑われて怒おこるのが卑怯じゃろうがな、もしと答えた奴がある。やな奴だ。わざわざ東京から、こんな奴を教えに来たのかと思ったら情なくなった。余計な減らず