144 名無しさん (ワッチョイW) 2023/03/12(日) 22:41:24 ID:7osPQdkN03
本拠地、東京ドームで迎えたイタリア戦
先発大谷が無失点、打線も勢いを見せ圧勝だった
ドームに響くファンの歓声、どこからか聞こえる「今年は優勝だな」の声
笑顔で帰り始める選手達の中、昨年のトリプルクラウン村上は独りベンチで泣いていた
シーズンで手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できるチームメイト・・・
それを今の村上で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」村上は悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、村上ははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいベンチの感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰ってトレーニングをしなくちゃあかんすよ」村上は苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、村上はふと気付いた
「あれ・・・?お客さんがいる・・・?」
ベンチから飛び出した村上が目にしたのは、外野席まで埋めつくさんばかりの観客だった
千切れそうなほどに旗が振られ、地鳴りのようにジャップの応援歌が響いていた
どういうことか分からずに呆然とする村上の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「ムネタカ、守備練習だ、早く行くぞ」声の方に振り返った村上は目を疑った
「う・・・内川さん?」 「なんだデブ、居眠りでもしてたのか?」
「か・・・亀井コーチ?」 「なんだ村上、かってに亀井さんを引退させやがって」
「ガッツさん・・・」 村上は半分パニックになりながらスコアボードを見上げた
1番:イチロー 2番:中島 3番:青木 4番:村上 5番:城島 6番:小笠原 7番:内川 8番:栗原 9番:岩村
暫時、唖然としていた村上だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「打てる・・・打てるんだ!」
片岡からグラブを受け取り、グラウンドへ全力疾走する村上、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・
翌日、ベンチで冷たくなっている村上が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った