【オメガ】小関直哉★5【ジェルジェル】 (1000)

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157 グナマーナ正大師 (sage) 2015/09/25(金) 22:36:42 ID:AGUqIwkY

劉は浙江省の貧しい漁村の生まれだ。清の頃から変わらない土と泥で出来た小さな家で彼は生まれ育った。
彼の家は貧乏だ。老人はよく文革時代の苦しさを若者に語るが、この村では文革時代を語る者は居ない。なぜなら、この村は文革時代と
さほど変わらない、いやもっと悪いかもしれない苦境が今でも続いてるからだ。
中国ではどんな貧しい家でも、必ずテレビやラジオはある。テレビの中の世界では上海や北京の成金どもが我が物顔で土地やマンションを買い占め、
リーベンやハングオで"爆買い"している様子が写っていた。

劉は悔しかった。なぜ、自分たちはこんな苦しい思いをしているのに、成金の犬どもは己の四肢もろくに使わずにして、儲けているのか。
彼は家族にこう言うと、父母や祖父は決まって"俄長者は俄乞食"とたしなめた。しかし、劉にとってそんな言葉は馬の耳に念仏だった。
いつか仏塔のように輝かしく、あの天を突き抜けるようなマンション群に、奴らに変わって住み着いてやる。劉の中に、そんな感情がふつふつと沸き上がっていた。
気づいたら、劉は密漁船に乗っていた。中国の貧困層が地の底から成り上がるには、ほぼ必ず犯罪に手を染めなければならない。中国沿岸部の成り上がる方法といえば、
もっぱら密漁だった。近世の時代、後期倭寇の拠点であった中国沿岸部の村々から、4、500年の時を経て倭寇達は蘇った。

劉が密漁を選んだのには、もう一つ理由があった。一・二八事變ー日本では、第一次上海事変と呼ばれる事件で、魚の行商であった彼の祖母は日本軍の駆逐艦の機銃で殺された。
国民軍と日帝軍との戦闘に巻き込まれたものだった。彼女は列強の権益の犠牲者であり、日帝の帝国主義の犠牲者だ。
これは70年越しの、日本鬼子どもへの復讐だ。

南シナ海では、ウニやアワビ(最近のウニやアワビは、日中境界でも取れるらしい)の他、ズワイガニ(地球温暖化の影響で東シナ海でも取れるらしい)の密漁が盛んだ。
故郷へ戻り、父母、祖父、そして兄弟達を喜ばしてやろう。そして、あの上海のマンション群に家族皆で住めるようになりたい。劉にはそんな希望があった。
そんな彼に、日本鬼子のおぞましい人造人間、艦娘の影が忍び寄っていた…