12 エッジ上の名無し (sage) 2023/09/30(土) 13:56:51 ID:TENt4Jv8
そういう会に、あのノーベル賞学者の湯川さんがしょっちゅうやって来た。湯川さんはいつも前のほうに座り、関心が出始めると貧乏揺すりを始めるクセがあった。湯川さんが貧乏揺すりをし始め、ぼちぼちでるなと思っていると、突然阿呆な質問をする。何でそんなことを聞くんやろう、とぼくらがどう考えてもよくわからないような突拍子もない質問なのだ。三十歳ぐらいの若手講師が怪訝そうな顔でおそるおそる「それはこういうことですが」と質問に答えると、湯川先生が頭をかきかき「あ、そうか、俺も馬鹿やな、やきが回ったな。阿呆な質問したなあ」と肩をすくめるのだった。
湯川さんはそういう「愚問の達人」だった。十質問すると、八つまではものすごい愚問。ところが二つぐらい、だれも考えなかった変わった方向の質問をする。そういう質問を仲間内では「湯川さんの愚問」といって珍重していた。実際湯川さんが来ると、研究会が盛り上がった。そういう研究会での姿勢を、湯川さんは阪大の助教授時代の上司である菊池正士(きくち せいし)教授に学んだという。これええなと思って、自分でもやるようになったのだという。