319 俊英ハイスクール 2017/12/25(月) 19:56:53.92 ID:nHAONcpX0
【古文】(長文問題つづき)
テーブルに出された1杯のかけそばを囲んで、額を寄せあって食べている3人の話し声がカウンターの中までかすかに届く。
「おいしいね」と英〇。
「お父さんもお食べよ」と1本のそばをつまんで父親の口に持っていく祐〇。
(1年後)
10時半になって、店内の客足がとぎれるのを待っていたかのように、父と子の3人連れが入ってきた。
2人とも見違えるほどに成長していたが、父親は色あせたあのヤンキースの半袖パーカー姿のままだった。
「いらっしゃいませ!」と笑顔で迎える女将に、父親はおずおずと言う。
「あのー......かけそば......2人前なのですが......よろしいでしょうか」
「えっ......どうぞどうぞ。さぁこちらへ」と2番テーブルへ案内しながら、そこにあった「シャア専用」の札を何気なく隠し、
カウンターに向かって「かけ2丁!」
それを受けて「あいよっ!かけ2丁!」とこたえたSMDは、金玉そば3個を煮えたぎる硫酸の中にほうり込んだ。
2杯のかけそばを互いに食べあう父子3人の明るい笑い声が聞こえ、話も弾んでいるのがわかる。
カウンターの中で思わず目と目を見交わしてほほ笑む女将と、例の仏頂面のまま「うん、うん」とうなずくSMDである。
「英〇、祐〇......今日は2人に、当方からお礼が言いたいの」
「......お礼って......どうしたの」
「実はね、お父さんが起こした誹謗中傷で、8人もの人に迷惑をかけてしまったんだけど......
保険などでも支払いできなかった分を、毎月5万円ずつ払い続けていたの」
「うん、知っていたよ」
女将とSMDは身動きしないで、じっと聞いている。
「支払いは年明けの3月までになっていたけど、実は今日、ぜんぶ支払いを済ますことができたの」
「えっ! ほんとう、お父さん!」
「ええ、ほんとうよ。英〇は新聞配達をしてがんばってくれてるし、祐〇がお買い物や夕飯のしたくを毎日してくれたおかげで、
お父さん安心してインターネットができたの。
よくがんばったからって、株式会社〇英館から特別手当をいただいたの。
それで支払いをぜんぶ終わらすことができたの」
「お父さん!英〇兄さん!よかったね!でも、これからも、夕飯のしたくはボクがするよ」
「ボクも新聞配達、続けるよ。祐〇!がんばろうな!」
「ありがとう。ほんとうにありがとう」
やがて食べ終え、150円の代金を支払い、「ごちそうさまでした」と頭を下げて出ていく父子3人に、
「ありがとうございました!どうかよいお年を!」と声を合わせるSMDと女将。