13 無名弁護士 2018/06/04(月) 21:15:49.33 ID:T7FRl9a90
(1年後)
10時半になって、診療所内の客足がとぎれるのを待っていたかのように、
父と子の3人連れが入ってきた。
2人とも見違えるほどに成長していたが、父親は色あせたあのヤンキースの半袖パーカー姿のままだった。
「いらっしゃいませ!」と笑顔で迎える若先生に、父親はおずおずと言う。
「あのー......44万円なのですが......よろしいでしょうか」
「えっ......どうぞどうぞ。さぁこちらへ」と2番テーブルへ案内しながら、そこにあった「バカ専用」の札を何気なく隠し、
カウンターに向かって「かけ2丁!」
それを受けて「あいよっ!かけ2丁!」とこたえた院長は、
金玉そば3個を煮えたぎる硫酸の中にほうり込んだ。
2杯のかけそばを互いに食べあう父子3人の明るい笑い声が聞こえ、話も弾んでいるのがわかる。
カウンターの中で思わず目と目を見交わしてほほ笑む若先生と、
例の仏頂面のまま「うん、うん」とうなずくSN院長である。
「英之、祐介......今日は2人に、当方からお礼が言いたいの」
「......お礼って......どうしたの」
「実はね、お父さんが起こした誹謗中傷で、8人もの人に迷惑をかけてしまったんだけど......」
「うん、知っていたよ」
院長と若先生は身動きしないで、じっと聞いている。
「支払いは年明けの3月までになっていたけど、実は今日、ぜんぶ支払いを済ますことができたの」
「えっ! ほんとう、お父さん!」
「ええ、ほんとうよ。英〇は新聞配達をしてがんばってくれてるし、祐〇がお買い物や夕飯のしたくを毎日してくれたおかげで、
お父さん安心してインターネットができたの。
よくがんばったからって、HRO学園や〇英館から特別手当をいただいたの。それで支払いをぜんぶ終わらすことができたの」
「英之兄さん!よかったね!でも、これからも、夕飯のしたくはボクがするよ」
「ボクも新聞配達、続けるよ。祐介!がんばろうな!」
「ありがとう。ほんとうにありがとう」
やがて食べ終え、4万4,000円の代金を支払い、「ごちそうさまでした」と頭を下げて出ていく父子3人に、
「ありがとうございました!どうかよいお年を!」
と声を合わせる院長と若先生と
SMDさんとIKD理事長。