デリュケースレinエビケー (398)

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329 プライベートルーム (sage) 2018/11/22(木) 02:25:40.31 ID:7aJquOKu0

「まったく、何があの人たちを駆り立てるんだろうね山本君」
「はい」

呆れ気味に皮肉を言ってみせると食い気味に返答された。
最近は山本君も嫌に反応が淡泊だ。
僕の同僚の山本君はいつものように足を組んで机の上に放り出し、椅子にもたれかかっている。
彼のそんな態度にもいつしか慣れてしまっていたが、最初の頃の目つきの悪さは今となっては見る影もなく光を失い無気力な人形のようになってしまっていた。
しばらく別の案件を担当していた僕は最近の唐さんの仕事の尻拭いを彼一人にまかせっきりにしてしまい、深夜まで薄らと事務所の明かりがついている日が続いているらしいことをここの管理人さんから聞かされていた。
まぁ、こんな事務所で働いていれば嫌にもなるよな。
僕たちは事務所の奥の部屋に入った事が無い。
最初に立ち上げたクロスの頃から唐さんの希望で個人の空間が欲しいとのことだったので構わないと承諾したはいいものの、それ以前から既に始まっていたこの習慣の後は必ず自分たちの糞尿が詰まったゴミ袋を抱えて二人で部屋に引きこもってしまう。
そして定時になると部屋から出てきて

「まだ入っちゃだめナリよ」

と僕らに釘を刺し帰宅する。
何度事務所を移転してもそこには奥の部屋があり、二人の無音のプライベートルームとして利用されていた。
二人が何をしていようと文句は言えないし、言うつもりもない。
無能とは言え事務所の顔として矢面に立って仕事をする唐さん、そして事務所の資金面の援助や仕事の紹介をしてくれる洋さんに対して僕は頭を上げられずにいた。
だがなぜか今日の僕はそれだけでは気が済まなかった。