330 プライベートルーム (sage) 2018/11/22(木) 02:26:09.37 ID:D9RNfWTt0
深夜、今日は早々に山岡君を帰宅させ誰も居なくなったオフィスで椅子に座り、僕は天井を見上げていた。
カチッカチッと壁時計の規則的な機械音だけが思慮に耽る僕を現実に繋ぎ止めてくれている。
昼間の非現実的な脱糞騒動やあの悪臭さえなければそこは何と言う事も無い普通の法律事務所だった。
だから僕はあの現実離れした光景に何とかして現実性を見出そうと試みた。
いい歳にもなって親の庇護の元甘やかされている唐さんとそれを矯正しようともせず甘やかしっぱなしの白モミ洋さん。
なんであの二人は脱糞をするんだろう。
「脱糞すること自体は良いにしても、普通はトイレでするべきだよな」
ぽつりと呟くが誰からも返事はない。
誰もいないので当たり前の事だが、何故だか妙に怖くなってしまった。
当たり前のことに対して同意を得られなかったことにか、そんな有りえる筈のないことを考えてしまう自分にか。
そもそもあれは脱糞ではないのか?
「そういえば洋さんは生まれるとか言ってたけど…どういう意味なんだろう」
僕は脱糞と出産の共通点を探してみた。
あるわけない。
強いて言えば体内で生成され、肛門から排出される位なものだ。
「いや、普通は肛門から…ましてや男性が出産なんてするわけないだろう…」
ダメだ、頭が痛くなってくる。
常識で考えたところで唐さんや洋さんの行動が説明できるとは到底思えない。
だが僕はもはや常識を求めているのではなく、論理の帰結と必然性が欲しいだけであって、納得できるなら彼らの常識で語られようとも構わないんだ…
出産の始点とは受精である。
生命の番いそれぞれの遺伝子情報が接合し細胞分裂を繰り返し、子宮という個別の空間で胎児の形を成し、母体から排泄され以降これを繰り返す。
胎児とは遺伝情報。
それまでの個人の営みや種としての生態情報の集合体であり結合体。
ならば出産とは混濁とした時間と経験の積み重なった情報の塊の体外排出と言えよう。
あれ…それなら脱糞は?
脱糞の始点は食あるいは体内の老廃物。
生命活動の優先事項たる食生活の集大成であり腸内環境の衣替え、大腸という個別の空間で排泄の時を待ち、それは人に限らず様々な生物の健康状態や生態を知る指標となるという。
糞とは体内情報。
それまでの個人の営みや種としての生体情報の集合体であり究極体。
まさに脱糞とは集積した時間と過程が織りなす情報の塊の体外排出と言えよう。
なるほど
脱糞と出産は同じものだったんだ。
だがなぜ
なぜ彼らは脱糞……いや出産なんてことを…