デリュケースレinエビケー (398)

←← 掲示板一覧に戻る ← スレッド一覧に戻る

61 『懐妊』 2018/06/24(日) 20:37:55.57 ID:m/xhHWCI0

「ああ、また駄目だったか」

釣りたての魚のようにびちびちと蠢く、目鼻はおろか顔すらないおぞましい赤子を手にして、当職は呟いた。
これで、今月に入って8回目の失敗だ。これまでに比べ、腹の中にいた期間が長かっただけあって、期待の分落胆も大きい。
これを産んだ洋はというと、ひゅうひゅうと声なき声で苦しさを訴えていた。虚ろな瞳はしっかりと失敗作を捉えていて、涙の膜が張った瞳に当職たちが収まる。

「洋。また失敗ナリ。つらいだろうけど、もう一度頑張るナリよ」
「無理じゃ、無理じゃ。これ以上したら、ワシは死んでしまう」

洋はまだ出産の余韻で体が動かないだろうに、首を大きく振って抵抗の意思を表す。
確かに洋はもう70、高齢出産もいいところだ。ましてひと月に8回の死産など、負担は想像を絶する。
……だが、それでも当職と洋は決めたのだ。どんな困難にも負けずに、二人の愛の結晶を設ける、と。

当職だって、殺害予告に怯えて勃たない日もある。ロリドルでシコり過ぎて、赤玉が出た日もある。
それでもいつかこの努力が実を結ぶと信じて、雨の日も風の日も、洋に注ぎ続けてきたのだ。
頑張っているのは当職も同じなのに、自分ひとりの都合でこれまでを台無しにしようとする洋に腹が立つ。

「当職だってつらいナリよ、洋。頑張っても頑張っても、どれだけ命を注いでも塊となって流れていく。でも、それでも子を作らないといけないナリ」
「……こんなことになるくらいなら、長生きなどすべきではなかった。もっと早くに死んでいれば――」
「それ以上は許さないナリよ、洋」

あくまで自分が被害者であるような物言いに腹が立ち、怒りのままに洋の肛門へ自身をねじ込む。
冷たいリノリウムの床に失敗作が落ち、潰れたような音がしたが、当職の意識は洋を掘削することにのみ向けられていて、どうでもよかった。
出産直後というのにある程度の固さを取り戻していた洋の肛門は、当職をとろけそうなほど気持ちよくしてくれる。

――薄々は、わかっていた。こうしてひっきりなしに体を重ねることが、死産の要因でもあるのだと。
だが、当職たちが背負うあまりにも悲惨な宿命を思うと、汚れた行為に走るより他なかったのだ。事情を知らない赤の他人に、当職の苦しみが分かるはずもない。