631 無名弁護士 2018/11/03(土) 21:29:07.38 ID:dK4VPLDY0
本拠地、AbemaTVで迎えた生放送
弁護士唐澤が大量失点、弁論も勢いを見せず惨敗だった
スタジオに響く唐澤のため息、どこからか聞こえる「だから二人に逃げられたんだよ」の声
無言で帰り始めるスタッフ達の中、 Steadinessの弁護士唐澤は独りスタジオで泣いていた
事務所設立時に手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できるチームメイト・・・
それを今の法律事務所Steadinessで得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」唐澤は悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、唐澤ははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、誰もいないスタジオの感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰ってテレビ出演の打ち合わせをしなくちゃな」唐澤は苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、唐澤はふと気付いた
「あれ・・・?山岡がいる・・・?」
スタジオから飛び出した唐澤が目にしたのは、事務所外まで埋めつくさんばかりの山岡だった
千切れそうなほどに腕をふるい、地鳴りのようにパソコンの操作音が響いていた
どういうことか分からずに呆然とする唐澤の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「からさん、次の案件です、早くやりましょう」声の方に振り返った内川は目を疑った
「す・・・山本?」 「なんだ貴洋、居眠りでもしてたのか?」
「こ・・・唐澤洋?」 「なんだ兄さん、かってに僕を殺しやがって」
「厚史・・・」 唐澤は半分パニックになりながら事務所名簿を見上げた
代表:山岡裕明 弁護士:唐澤貴洋弁護士 弁護士:山本祥平 事務員:渡辺恵美 顧問:唐澤洋
暫時、唖然としていた唐澤だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「勝てる・・・勝てるんだ!」
渡辺から訴状を受け取り、裁判所へ全力疾走する唐澤、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・
翌日、事務所で冷たくなっている唐澤が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った