546 大晦日文学スペシャル for CEO(52) (文豪SMD) 2018/12/31(月) 13:32:39.12 ID:bMclKlck0
開襟シャツの学生服に着替えた息子は私を外へと連れ出しました。
「こんな恰好で外に出るなんて、見られたらどうするの」
「もう日が暮れて顔はわかりません。それにこの土地をもうじき離れるんです。世間にどう思われようがいいじゃありませんか」
互いに制服に身を包んで鞄をもって夜道を歩いていきます。
向かった先は近所の学校、明りが消えてだれもいないようなので二人で中へと入りました。
わずかな月明かりを頼りに教室へと入っていきます。
「学校なんて久しぶりだわ。私の学校もこんな感じだったわ」
「ええ、母上とこうして学生気分を味わえて最高です。母上もどうぞ学生になりきってください」
「ふふ、高橋祐介君。もう下校時間よ。早く帰らないと明日言いつけるわよ」
「幸子さんこそこんな時間まで居残ってるじゃないか」
私たちはつい笑ってしまいました。再びこうして学生ごっこを興じることになり、
それも息子と同級生という遊びをはじめたのです。
普段は真面目でお互いが恋しているのは人には秘密という設定で楽しみました。
「幸子さん・・・授業中もずっと幸子さんのことばかり考えてた」
「祐介君、私もよ」
教室で手をつないでいた私たちは徐々にそのごっこ遊びにのめり込んでいき、初恋の恋人たちのような気分でした。
祐介は私を引き寄せると強く抱きしめました。胸の鼓動が高鳴ってしまいます。
「卒業したら俺と一緒になってくれ」
「だめよ、お父様が許してくれないわ」
「構うものか、俺は・・・幸子さんが好きなんだ。幸子、俺についてきてくれ」
演技とは思えない真剣な告白、本当に胸をうたれてしまいました。
かつて高島二中時代に想っていた初恋の男子学生、今では毎日臭いスウェットスーツで仕事もせず居座るその人のことが頭をよぎりました。
その人とこうやって向かい合えたらどんなに素敵だったことか、その想いが私の中で再構築されていきました。
初恋の相手(52)が息子、祐介に上書きされていきました。
「初めてお見かけしたときからずっと好きでした。大好きです祐介」