5 一般藤沢市民 2021/01/09(土) 15:06:21 ID:gIcpZsnn
何という意欲的なスレナリか…
高橋ユキ「つけびの村 噂が5人を殺したのか?」晶文社
過疎の集落で起きた「山口連続放火事件」の関係者を取材したノンフィクション作品。
作者は何度か村を訪れ関係者からの取材や広島刑務所に収監されている被告人の面会にとどまらず、
事件当時の新聞記事や村の歴史書を丁寧に読み込んでいく。
犯人の生い立ちや人となりだけでなく、村の成り立ちや村の行事の様子、
村に蔓延する噂を根気よく聞いていく作者の姿勢は、
自分も一緒に村を捜索しているような臨場感がある。
作者の丁寧な取材によって初期の報道にもあり、現在でも定説となっている
「被告人が住民から虐められていたため犯行に及んだ」という事実が誤っていたこと。
どの社会でも起こりうる事件であることが徐々に明らかになっていく過程は、
推理小説を読んでいるかのような迫真性があり、
残虐な事件のルポルタージュにもかかわらず、読後は静かな感動がある。
本書にも書いてある通り、SNSや実社会で噂に惑わされたり、
秘密の話を共有することで人間関係を築いたことは、
誰もが一度は経験することであり、あの村が特別ではないのである。
また被告の精神障害に対する裁判所と弁護側の受け止め方は、「心神喪失状態」への定義の曖昧さや
「鍵体験」といった返って真実が見えなくなる危うさをはらんでおり、現行の司法制度の問題とも重なる。
根拠の無い噂や陰謀論、精神障害を抱えた被告人への事実追及と弁護側の問題等
教徒でも興味関心のある話題を扱った内容だと思いますので是非ご一読ください。
(605字)
長々と書きましたが、作者は傍聴マニアで毎日のように東京地裁に取材にいっているようなので尊師に会ったことあるかもでふね。