129 塘懌䝿拝 2013/08/22(木) 18:12:32 ID:6IhHkee.
6 損害
被告Y1らは,第1事件原告らが取得した株式は未公開株式であっても無価値でないと主張し,被告Y2も,販売価格の4割程度の価値があると主張する。しかしながら,第1事件原告らが購入した株式のうち,大塚化学ホールディングス株式会社(甲A12),大塚製薬株式会社(甲A13),株式会社シリコンメディア(甲A17),株式会社デジタルチェック(甲A18)及び日本ファースト証券株式会社(甲A20)の各株式には,譲渡制限があり,自由に流通できないため,実質的な価値はなく,株式会社ジーエス(甲A14)及びジャパンメディアシステム株式会社(甲A15の1,2)の各株式については,買取実績はないため,実質的な価値はなく,株式会社ピーコム(甲A21の1,2)の株式も実質的な価値はないものと認められ,これに反する証拠はない。ジャパン・レア・アーツ株式会社及びフレッパー・ネットワークス株式会社についても同様である。他方,エース証券株式会社の株式は,1株290円程度の価値(甲A11)が,日本出版販売株式会社の株式は,1株299円程度の価値(甲A19)がそれぞれあるものと認められるから,株式取得額から上記の価値を控除した額が損害となる。
したがって,原告番号1,5,11,18,21,24及び25の各第1事件原告については,日本出版販売株式会社の株式1株当たり299円を控除した額が,原告番号25の第1事件原告については,エース証券株式会社の株式1株当たり290円を控除した額がそれぞれ損害額となるが,その余については購入額が損害額となる。そして,損害額の1割を弁護士費用として第1事件被告らの不法行為と相当因果関係にある損害と認める。
7 詐害行為の成否等
前記認定によれば,被告Y3は,平成18年5月3日,詐欺の容疑で逮捕され,接見禁止処分が付された上で勾留されたが,親類の手前,公訴が提起される前日の同年6月22日に被告Y4と協議離婚する旨の届出をし,起訴後の勾留中の同年8月24日,本件不動産の被告Y3の持分全部について同年6月22日付け財産分与を原因とする持分全部移転登記手続をしたものであって,被告Y3は,被告Y4が身元保証人となることを条件として,同年11月16日に保釈され,その後,被告Y4とともに本件不動産において同居生活を継続し,有罪判決を受けた後,平成19年7月23日に住民登録を異動したものの,被告Y4とは密接に連絡を取り合い,刑事被告事件の公判期日においても,復縁の意思がある旨述べているのである。このような生活実態等やそれまで婚姻破綻を窺わせる事情も全くないことなどに照らすと,そもそも,被告Y3と被告Y4の協議離婚は,仮装されたものである疑いが強い上,本件不動産は,もともと,被告Y3と被告Y4の共有とされており,被告Y3の共有持分のみが夫婦の実質的共有財産として離婚に際して清算の対象となるものとはいえず,被告Y3の唯一の資産である被告Y3の共有持分全部を譲渡するのは,婚姻生活の期間等やそれまで特に被告Y3に有責行為はないことなどの事情に照らすと,著しく過大であって,しかも,十分な協議がされたものとも窺われないから,被害者から多額の損害賠償請求をされることを予想した処分といえ,財産分与に仮託して財産処分をしたものと認めるに足りる特段の事情があるというべきである。そして,被告Y4も,詐害の認識があるものというべきである。そうすると,被告Y3の被告Y4に対する財産分与は,詐害行為としてその全部が取消しの対象となるとともに,被告Y4は,被告Y3持分全部移転登記の抹消登記手続をする義務を負う。
なお,被告Y3は,詐害行為の債務者であり,詐害行為取消訴訟の被告適格はないから、被告Y3に対する詐害行為取消の訴えは不適法というほかはない。
第2事件原告らは,被告Y3の被告Y4に対する上記財産分与が執行妨害として不法行為に当たると主張する。しかしながら,被告Y3が被告Y4に財産分与をした当時においては,第2事件原告らは,未だ損害賠償請求をしていたわけではないから,債権者を害する認識をもってされた財産分与が,直ちに第2事件原告らに対する具体的な執行妨害行為と評価できるものではなく,未だ不法行為は成立しないものというべきである。また,前記のとおり,詐害行為が取り消されて,債務者である被告Y3の一般財産が回復されるとすれば,そもそも不法行為は成立しないから,いずれにせよ,第2事件原告らの主張は採用できない。