621 エッヂの名無し 2025/08/15(金) 22:59:00.358 ID:GroeMtmLL
●「立ち直ることが難しく、忘れることはできない」アメリカ
評価:★★★★★★★★★★
最初に言っておきたいのだが、もしあなたがこの作品をまだ観ていないなら、このレビューを読ん だ後(もしくは読む前でも)、できるだけ早くこの映画を観るべきだ。買っても借りてもいい。
なぜ なら、イサオ・タカハタが生み出したこの傑作の価値を伝えるのに、私の言葉だけでは不十分だから だ。
私の知る限り、最も力強いメッセージを持つ反戦映画、それが「火垂るの墓」だ。芸術作品とし
ての価値で語るなら、ピカソのゲルニカやエルガーのチェロ協奏曲と同ランクと言える。
多くのアメリカ映画の中で、これほど強力な反戦メッセージを持つものがあっただろうか?「華氏 911」?「地獄の黙示録」?それとも「シンドラーのリスト」か?率直に言って、どれもこの作品に 及ばない。
「火垂るの墓」は、汚れなき魂の喪失を描いた作品だが、それは幼い二人の主人公のことだけではなく、日本という国全体にとっての話なのだ。
ストーリーの中心となるのは二人の子どもたちだ。
13歳の清太と、4歳になる彼の妹の節子。彼ら の母親は第二次大戦中、爆撃のために命を落とす。そのため、この兄妹はおばの元に身を寄せること になる。最初は親切だったおばだが、次第に、なぜ兄妹に食べ物を与えて保護しなければならないのか?なぜ清太は国のために働こうとしないのか?と、不快に思うようになっていく。
結局、清太と節子は、廃墟となった防空壕で、二人だけの暮らしを始めることになった。しかし、 食料がなかなか手に入らず、徐々に栄養失調に陥ってしまう。そして、彼らは命を落とすのだ。実 は、映画序盤から、彼らが死ぬことは明らかにされている。ボロボロの服をまとって、駅構内に横た わる清太、栄養不良の状態にあることは明白だ。彼の持ち物だったミステリアスな缶を、駅員が夜の 闇に向かって投げ捨てた。そこにはホタルが舞っており、節子の幽霊が現れる。そこに清太の幽霊が 加わり、彼らは電車に乗って、あの世へと旅立つのだ。
ストーリーは、そこからフラッシュバックされる形で語られていく。「昭和20年9月21日夜、僕は死んだ」これが出だしのセリフだ。
この映画で興味深いのは、日本の作品であるにもかかわらず、日本人を犠牲者として扱うこともな ければ、アメリカ人を悪者扱いするわけでもないというところだ。むしる、苦しんでいる子どもたち を冷たくあしらう日本の人々に対しての軽蔑が感じられる。タカハタは、戦争で真に失われるものは生命ではなく、汚れなき魂であると訴えているのだ。
アニメーションそのものは、リアリズムに基づく伝統的なスタイルで、ディテールも豊富だ。キャ ラクターたちの死を悲劇的に描く一方で、美しい瞬間も多く描かれている。だが、この作品に称賛さ れるべきシーンが数多く含まれているのは、別に不思議なことではない。なぜなら、この作品を製作 したのは、日本の伝説的なアニメーションスタジオである、スタジオジブリだからだ。私は幸運に
も、このスタジオが作り上げてきた息をのむような作品の数々を鑑賞する機会に恵まれてきた。
「火垂るの墓」は、ストーリー、その象徴的意味、アニメーション、全てが一体となって、まるで腹 に強い一撃を食らったような心の衝撃を感じる作品で、そのショックから立ち直ることは難しく、忘 れることは不可能な作品だ。アニメーションではあるが、極めて生々しくもある。実写映画ではない
という理由で、作品の力強さが損なわれるわけではないという点にも気づいてもらえるだろう。
あなたに、立ち直れないほど落ち込んでも構わない夜があるなら、是非、「火垂るの墓」を観て頂 きたい。これは、決してあなたが喜んで観たがるタイプの作品ではないが、しかし、決して、観たことを後悔する作品でもない。