261 エッヂの名無し 2025/10/04(土) 11:01:14.464 ID:ZggWy1TJh
斉藤は言う。
「実際に4軍監督になってみて思いますけど、僕が若い頃に見ていたファームの監督とは全然違いますね。これまでは軍監督が、その軍の全体を動かしていた。でも今は、コーディネーターがいる。コーディネーターから下りてきたものに対して、僕ら監督やコーチが現場で動く。だから……思うところはありますよね。僕もはじめは葛藤がありました」
軍のトップの座に就いたと思ったら、コーディネーターなる役職が登場し、監督といえどその指示に従わなければならない。しかも、監督より年下のコーディネーターもいる。球界には年功序列の価値観が根強いこともあり、監督の側に複雑な感情が生じるのは当然のことだ。24年の2軍監督(松山秀明)や3軍監督(小川史)は斉藤よりさらに上の世代に当たる。葛藤はなおのこと強かっただろう。
心理的な面だけでなく、具体的な業務の部分でも虚無感に近い思いが次第に募った。
コーディネーターは、各選手に対して「こういう方向性で育成しよう」「そのためにこういう指導が必要だ」というプラン(案)を立てる。そして、フロント・現場との協議を経てプランが決まると、その通りに現場での指導が実施されるよう管理する。選手に対する技術的な指導に関しては、各部門のコーチが担う。基本的に軍監督の関与はない。
試合での選手起用も同様で、誰に、いつ、どれくらいの出場機会を与えるか、大部分はコーディネーターとコーチの間で方針が決められる。
「その日の試合で投げるピッチャーは(球団内で使用されている)アプリにあらかじめ入力されていて、球数やイニングのメドも含めて、僕はそれを見て従えばいい。『この選手も投げさせたらいいんじゃないですか』みたいなことを僕から言うことはありますよ。でも、あんまりそこに入っていきすぎるのは良くないなっていう思いもあります。やっぱり、コーディネーターとコーチがミーティングしてきた流れがあるわけですから」
残された監督の主な仕事は試合で采配を振るうことだが、ファームの試合で求められているのは勝利というよりも育成である。野手には打たせることが優先され、細かなサインプレーを使う機会は決して多くない。
例えるなら、食材を手渡され、レシピ通りにつくってくれと頼まれたシェフのようなものだろう。アレンジの余地はなく、淡々と、正確に手順を進めていくのみ――。
「これ、隣にいるコーチでもできるんちゃうかな。4軍監督の仕事って何なんやろ……」
そんな思いが、斉藤の頭の中を幾度となくよぎった。
疑問を抱きつつも、球団の意図は分かっていた。斉藤は言う。
「こういう方向性で進めていこうとしているんだな、というのは僕らも理解しています。コーディネーターの考えは、フロントの考えでもあるわけですよね。これからのチームをどうしていくのかを(長期的に)考えたうえで指導や育成の方針を立てている。僕らがケンカ腰になってそれを崩しにいくような必要性も権利もないと思います。ただ、僕らがいちばん現場を見ているという自信はあるので、気づいたことは伝えていくべきだと思う。お互いが理解し合えるような話し合いをすればいいのかなって感じですね」
こう見えて意外と柔軟でしょ、と言って斉藤は笑みをこぼした。
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4軍監督のプブ