295 エッヂの名無し (L20 V6hJ-4GFH) (sage) 2026/03/30(月) 22:43:01.214 ID:LYfD6rnR6
終戦の時は、わたくしは終戦の詔勅を親戚の家で聞きました。と申しますのは、東京都内から離れた所の親戚の家に、わたくしの家族が疎開をしていまして、終戦の詔勅自体については、わたくしは不思議な感動を通り越したような空白感しかありませんでした。
それはかならずしも予期されたものではありませんでしたが、今までの自分の生きてきた世界が、このままどこへ向かって変わっていくのか、それが不思議でたまらなかったのです。
そして、戦争が済んだら、あるいは戦争に負けたら、この世界が崩壊するはずであるのに、まだまわりの木々の緑が濃い夏の光を浴びている。
それを普通の家庭の中で見たのでありますから―まわりの家族の顔もあり、まわりに普通のちゃぶ台もあり、日常生活がある―それがじつに不思議でならなかったのであります。
〜三島由紀夫〜