片手で遠くを指差す兄と、それを見据える弟の像だ。
彼らは江戸時代、まだ未開の地で飲用水にも事欠く多摩地方に人工上水を作った人達である。中世〜近代への過渡期の偉大な開拓者だ。
藤井「いや〜やっぱ堰っつったら兄弟像でしょ」
そういいながら像の前に自転車を止めた。
藤井「よし、例のやついくか」
藤井はブラの詰め物のズレをきちんと直し、像の前に直立した。
藤井「玉川兄弟に、敬礼っ!」
俺「なんで敬礼すんだよ、ていうかお前のそれ『どーもすみません』じゃん」
藤井「いや、なんとなくな」
自転車の籠から袋を持ち出しながら言う。
藤井「むしろ俺たちが新世代の玉川兄弟だし」