910 - 来世はカメムシ (sage) 2024/06/17(月) 01:41:46 ID:cznD6JHS0(主)
母子家庭って書いてあったぞ🤔
ただいまぁ〜」
帰宅した茜は部屋の電気をつける。リビングで丸くなっていた亀の弥太郎の甲羅を撫でた。日向ぼっこしていた弥太郎は、茜の帰宅に気づくと、のっそりと首を伸ばす。
お母さんはまだ仕事から帰ってきていないようで、テーブルの上にはラップのかかった野菜炒めと卵焼きが置いてある。
『五〇秒チンして食べてね。ピーマンも残さず食べること!』
母のメモ書きを読むと、弥太郎に語りかけた。
「うぅ〜。なんでわざわざ、茜の嫌いなものつくるのかなぁ? もう……! 弥太郎、食べる?」
「……」
弥太郎は大きなあくびをした。茜はすかさず、その口にピーマンを突っ込んだ。
「……!」
弥太郎は目を見開いた後、ゆっくり咀嚼して飲み込んだ。
「うんうん、ゆっくり噛んで食べるんだよぉ〜」
茜はにこにこ笑いながら、自分の苦手な野菜を弥太郎に与えた。母子家庭の茜にとって、亀の弥太郎は大切な話し相手だ。
お母さんが帰ってくるのは、どんなに早くても夜の八時すぎだった。玄関で物音がして、弥太郎が首をもたげる。
「ただいま〜! 茜、ちゃんとご飯食べた? あら、ピーマンもちゃんと食べたの。えらいえらい」
帰宅したお母さんは、スーツを脱ぐより先に野菜炒めの皿を確認した。