暗黒庭園 (92)

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12 名前が出りゅ!出りゅよ! 2014/05/07(水) 17:41:50 ID:4LOgmXtY

下を向いて悲しげにしている男の子こそ、あの亮太くんだったのです。
なるほど、確かに彼も暗黒弁護士にさらわれたのですからそこにいてもおかしくはありません。
しかし千尋ちゃんが助けにきた、というのはどういうことでしょうか。
二人は以前からの知り合いだったのでしょうか。
亮太くんが不思議そうな顔をして千尋ちゃんの顔を見つめます。
千尋ちゃんは笑顔のまま、自分の髪の毛に手を伸ばします。
ああ、なんと。そこにいた誰もが驚きました。
なんとその髪の毛は偽物だったのです。
その下から現れたのは、女の子などではなく、ほっぺたの赤い1人の元気そうな少年だったのです。
もうみなさんお気づきでしょう。
千尋ちゃんは、あの厚史少年の変装だったのです。
「驚かせてごめんね。僕はあの唐澤洋先生のもとで助手をやっている厚史というものなんだ」
厚史少年は、亮太くんのみならずその部屋にいる全員に向かって話しかけます。
「依頼があって君たちを助けにきたというわけさ。だからもう安心してほしい」
部屋にざわざわと驚きの声と、安堵の溜息が広がります。
「でも助けに来たって言ったってどうやって逃げるのさ。ここがどこかもわからないのに」
そう厚史少年に話しかけたのは亮太くんです。亮太くんの言っていることにも一理あります。
「いや大丈夫さ。ここがどこかはだいたい把握しているよ」
そう言いながら厚史少年はスカートの中から何やらいくつかの道具をとりだしました。
「僕が練馬で車にのせられてから大体30分走ったことになる。それはこの懐中時計ではかっていたんだ」
そして地図を広げ、コンパスを取り出し円を描いてみせます。
「自動車の速度は、あの揺れ具合から考えて平均で時速40キロから50キロってとこかな」
時速40キロの円と時速50キロの円、その間を薄く塗りつぶします。
「そして方角なんだけど、僕は自動車に乗っている間ずっと眩しかったんだ。あれは夕日だね。
ということは、この車は練馬から西の方角へまっすぐに進んだということになる。
つまり、この地図でいうとこのあたりだ」
そういって地図のある範囲にぐるっと丸をつけます。
「更に、これだけの子供を誘拐しているということはあたりには民家がない、つまり住宅街ではないということになる。
なぜなら、もし住宅街だったら君たちが大声を出して助けを求めれば誰かが気がつくだろ。
どこか草原のようなところにこっそり建てられた建物に僕たちは今いるはずなんだ。えっと、あ、ほら地図だとここがそうだね」
そう言いながら、先ほど丸で囲んだ範囲のうち、草原になっている場所を地図の上に指さします。
「僕たちはここに閉じ込められているってわけさ」
厚史少年は笑顔でみんなにそう説明します。みんなは厚史少年の説明に聞き入っていました。
さすがは厚史少年です。たったそれだけの情報から、自分たちがどこに閉じ込めらているかを推理してしまったのです。
しかし気になることがあります。
一体どうやって千尋ちゃんと厚史少年が入れ替わったのでしょうか。
そして、厚史少年は今いる場所からどうやって逃げるつもりなのでしょうか。
みなさんも少し考えてみてください。

(次号へ続く)