脳食願望 (15)

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2 名前が出りゅ!出りゅよ! 2015/08/08(土) 18:29:41 ID:DCip/nlY

「かき氷を作ってやるよ」
僕がそういうと、弟は喜んだ。この時は少しだけ、暑さを忘れることができたと思う。僕は弟に待つように言って、家の中を歩き回って、道具を揃え始めた。夏の暑さよりも、かき氷の方が何倍も大事なことだった。
熱帯雨林のような倉庫を探し回って、古びたかき氷器を引っ張り出した。父がアイスを買ってくれるようになってから、そういえば何年も使っていない。しばし感傷に浸る。
次に、氷を作るための寒剤を用意した。エタノールとドライアイスを混ぜると、融解熱と溶解熱が奪われて氷点下80度まで温度が下がるらしい。これならいくらでも氷が作れる。ドライアイスは、父の買ったケーキの付属品を拝借した。
最後に、味付けのためのジュースを用意した。以前父から、ブルー・ハワイの原料は、単なる果物の混ぜ合わせであると聞いて、心底がっかりした思い出がある。
「ブルー・ハワイ」という謎めいた名前、中身の推測できない味、そのミステリアスな感じが、僕の幼子特有の旺盛な好奇心を満足させていたというのに。まあ、世の中というのも、成長するということも、そういうつまらないものなのだろう。
全ての道具を抱えて、僕は弟の元へ急いだ。