3 名前が出りゅ!出りゅよ! 2015/08/08(土) 18:30:28 ID:DCip/nlY
部屋につくと、弟は暑さと、膨らむばかりのかき氷への期待に耐えかねて、その場でぐったりとしていたが、僕の姿をみとめると、途端に目を輝かせて、生命力を取り戻した。
さっそく、作業に取り掛かる。まずハンカチにエタノールを染み込ませて、僕は弟に言った。
「じゃあ、その前に、お医者さんごっこをしようか。」
当惑する弟の口を塞ぐように、素早くハンカチを押し付けた。弟はしばらくもがいていたが、やがて動きを止めた。
僕は弟をその場に正座させると、鋸でゆっくりと頭蓋を切り始めた。これが全作業の中で一番大変な作業だった。元々堅くて分厚い頭蓋骨を、昏睡が解ける前に素早く開かなければならない。しばらく格闘した末、なんとか天辺を曝け出すことに成功した。
頭蓋の中に湛えられている脳は、僕の想像していたより白く、つややかで、綺麗な形をしていた。たったこれだけのものが、僕たちを暑さで苦しめ、人生をつまらないものに変えてしまっているのだと思うと、思わず恍惚としてしまった。
しかし、僕はすぐに我に返った。これはいけない。生ものを夏に放置しておくほど危険なことはない。すぐに次の作業をしてしまおう。僕は慌てて準備に取り掛かった。
そうこうしているうちに、弟が起きだした。気が付いたら僕に背を向けて正座していて、頭がどうも変な感じがする。奇妙に思ったのだろう、首をかしげている。人の熱の大半は頭から発散されるそうだ。よかったじゃないか、涼しくなって。
このまま弟が起きなかったらどうしようかと思っていたが、その心配はないようだ。では、僕の楽しみにしていた作業を始める。
暑いと感じる脳が悪い。そんな脳なら無い方がいい。代わりに、夢を詰めてあげよう。