5 名前が出りゅ!出りゅよ! 2015/08/09(日) 01:09:57 ID:H1QtDJVY
男は今まで自分を責めつづけていた。男はもう楽になりたかった。男の異形を目の当たりにして悲鳴を上げる人々の声は、まるでお前は許されざる罪人だと断定しているように、男には聞こえていた。
男は、それを受け入れた。自分は、息子をまともに育てることのできないダメ親です。どうぞ死刑にしてください。
男は楽になりたかった。刑務所でも、実験室でも、何処へなりとも連れて行ってください。
そうして男は諦めた。
瞬間。
男の下腹部を鈍痛が突き上げた。男は途端に白目を向き、ビクビクと震え出す。男は口を魚の様にパクパクと開けては閉め、開けては閉めを繰り返す。
尚大きくざわめくホーム。誰かがつんのめりながら鉄道警察にすがりつく。その瞬間にも、男の下腹部はまるで心臓の様にバクバクと拍を打っている。
自分は、何か取り返しのつかないことをしてしまったのではないか。男は考え、そして気づいた。
男は罪を受け入れたのだ。息子なんて忘れて、新しい子どもを作りなおしたいという、自分の思いを認めたのだ。必死になって抑え込んでいた思いは、抑えが無くなったなら当然、溢れ出す。
肥大化したペニスの茎が不気味に脈打つ。その赤々とした輪郭が蠢く様に波打って歪む。
あの悪魔が与えたこれは、ペニスではなかった。これは母胎だ。これ自体に、いまだ見ぬ何者かが入っているのだ。
びったんびったんホームの床を叩くペニスの先、半分ほど包み込んでいた皮が薄く引き伸ばされミリミリと音を立てて剥けていく。
ふと、うねっていた茎が硬く硬直し、男の眼前に突き出すようにして反り返る。
そしてしばらく鈴口が呼吸をする様に開閉を繰り返し、不意に大きく開いた。
『あああああああああああああああ!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ 』
頭がまず飛び出す。裂けた鈴口を更に押しのけ、肩が、胸が、腕が、順に男の胸にのっていく。そして足が最後に落ちた時、男はそれを腕にかきいだいた。
それは赤子であった。ふっくらとした輪郭と、アヒルのように突き出した口。そして、白い揉み上げ。
男にそっくりな赤子であった。
まるで、クローンのように。
大声で泣きわめく赤子を胸に抱き、男は悲しげに笑った。
『お前の名前は洋一じゃよ』
発車の時間を告げるベルが、けたたましく鳴り響いた。