勝負の行方 (8)

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1 名前が出りゅ!出りゅよ! 2015/08/21(金) 02:31:06 ID:jE/7bGRc

虎ノ門からそう遠くはないところにある倉庫に黒塗りのベンツが乗り付けた。
ボロボロの倉庫の外観とミスマッチなみすぼらしい見た目をしたその車から出てきたのは痩身の男であった。
黒いシャツに灰色のジャケット、靴はピカピカに磨かれている。腕にはロレックスが光り、まぶかに被った黒い帽子の下、サングラスが光っていた。
部下と思しきスーツを着た屈強な男が三人、後続の車から降りてくる。
倉庫からは小太りの男が出てきて、痩身の男に歩み寄り手を差し出した。
「久しぶりじゃのう、きみちゃん」
きみちゃんと呼ばれた痩身の男はその手を握り返して言う。
「ああ、久しぶりだ、ひろくん。どうだ元気にしてたか?」
「ああ、この通り」
ひろくんと呼ばれた小太りの男は、きみちゃんを倉庫の中へと案内しようとする素振りを見せたが、一言きみちゃんに放った。
「後ろの男たちはなんじゃ?ワシらの取引には不要じゃろ」
ひろくんがそう言うと部下の男のうちの一人がジャケットをめくり腰元を見せた。そこには拳銃がおさめられていた。
「そういうことか。きみちゃんもだいぶ暴力的になったのう」
「いいから案内するんだ、ひろくん」
ひろくんは肩をすくめ倉庫の中へと手招きできみちゃんとその部下たちを誘った。
倉庫に入り、扉が閉められると、ひろくんはそこに置かれた資材のうちの一つを機械でどかした。そこには地下へと続く扉があった。
「この下じゃ」
ひろくんは扉をあけ、ハシゴを降りてゆく。きみちゃんと部下たちもそれに従った。
下まで降りると電気をつけながらひろくんは言った。
「最近は監視の目が厳しくなってきてのう。今日も事務所にいるときに外から望遠レンズで覗かれたんじゃ。
尾行をまくのも、一般人のふりをするのも得意じゃが、さすがにこれの製造を目立つ場所でするわけにもいかんからこんな地下まで潜るはめになったんじゃ」
「それはお気の毒に」
きみちゃんはサングラスと帽子を外した。帽子の下には白髪があった。
「興味なしといったところかのう。で、どれくらいご所望なんじゃ?」
ひろくんはきみちゃんに尋ねた。それに対して、きみちゃんも質問をした。
「ここには今どれくらいあるんだ?」
「ざっと300から400ほどじゃが」
「それじゃあ全部だ」
ひろくんは驚いた顔をみせる。
「金ならある。もちろんキャッシュだ。ここに6億あるからそれで十分だろう?」