製造物責任法 (28)

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3 名前が出りゅ!出りゅよ! (sage) 2015/08/21(金) 11:16:50 ID:yv0V4yyo

得物が無くなった私は急ぎ廊下側に逃げる。 激昂した小関直哉がイキリ勃たせた一物と下半身を丸出しにしながら追い掛けてくる。 しかし怒りのせいで僅かな知能も雲散霧消してしまったのか、彼は並べてある机に足を取られ転倒してしまった。 私は廊下に設置してあった消火器を手に取った。 ズシリと鉄の重量が感じられる。

「ヴオーッ」
そう叫びバタバタと足掻く失敗作の頭に消火器を振り下ろす。

ごんっ。 ごんっ。 ごんっ。 ごんっ。 ごっ。 ごんっ。 ごんっ。
ごんっ。 ごんっ。 ごきっ。 ごきっ。 ごきっ。 ごきっ。 ごんっ。

赤い鉄の塊が脳に命中するたびに、小関直哉の魔羅からはぴゅっ、ぴゅっ、ぴゅっと生命の素が力無く吹き出る。 生涯誰をも孕ませることの無いであろうその欠陥遺伝子の塊を避けつつ、私は消火器を真正面から欠陥品の顔面に打ち込んだ。 鼻と口から血が散る。

そういえば最近、製造物責任法というものができたと小耳に挟んだことがある。 私の受け持つ児童たちに質問してみると皆知っていたようだ。 今は社会の授業でそんな事まで習うのか、と驚いた。

工業製品に何か欠陥があって、購入し所有した人間がその欠陥によって損害を生じた場合、欠陥品を作った人間がその全責任を負わなければならないらしい。

人間はどうなのだろう。 いや、私の目の前の「これ」はどうだろう。 これの遺伝子はヒトのそれではない。 遺伝子数が四十六分の一だけ違うのだから、ヒトとの差異は二・一七パーセント。 チンパンジーのヒトとの差異は一・五パーセントと聞いたことがある。 ならばこれはチンパンジーよりヒトから遠い存在ではないか。 単なる動物であり有機体の塊だ。 法律上はイヌやネコと同じく「モノ」に分類されるのだ。 それなら、この欠陥品を作り出した責任は私が背負わなければならない。 この不良品を作り出した製造業者たる私がこの欠陥品を処分しなくてはならないのだ。

ああ、面倒くさいなあ。 赤と白が混じる教室の床の上で、私は小さく溜息をついた。


製造物責任法 第三条

製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。