1 名前が出りゅ!出りゅよ! (sage) 2015/09/13(日) 21:09:44 ID:GqtiECQE
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当職とは、単なる穴である。
当職を設計し、製造した会計士がそういった目的で造ったのだから、これは歴然たる事実だ。
その会計士というのが珍妙な男で、毎晩当職の穴を刺激してくる。しまいには己の陰茎を穴に挿入し、「でりゅ! でりゅよ!」などという喘ぎ声と共に当職の穴に精液を注ぎ込む始末である。
当職が調べたところでは、人間の陰茎というのは一般に女性の膣に入れるものであり、精液というものは子孫を作るために出すものである。当職のような機械仕掛けの人形に注ぎ込むものではない。
何故このような行為をおこなうのか、一度当職は一連の行為が終了した際、余韻に浸っている会計士に尋ねたことがある。
すると彼は煙草の煙をふぅーっと吐いて、「セクサロイドのお前にはわかりにくいかもな」と苦笑した。
「いいかいTAKAHIRO、お前の穴というのは非常に気持ちがよいのだよ。だからワシは毎晩お前の穴にイチモツを挿入せずにはおれんのだ」
「しかし、あなたには奥様がおられる。貴重な精液を当職に注ぎ込むより、子を成したほうがよいのではないのですか」
「あれの穴を利用しろと? バカバカしい、ワシにだって選ぶ権利くらいあるさ」
「わかりませんね。当職の調べた書物には、人間の夫婦は性交を行うものだと書いてありました」
「それ以外だってあるさ。あらゆる事例には例外というものが存在する」
会計士は眉をしかめて吐き捨てる。
なるほど人間の思考というものは複雑で矛盾にあふれているものだな、と当職は考える。
立ち上がり、いささか乱暴に扱われた股関節周辺の動作を確認しながらさらに尋ねた。
「ではATSUSHI‐MK2は? 当職の後継機である彼をなぜ使用しないのですか?」
動くたびに、粘性の高いドロリとした液体が下腹部内部で蠢くのを感じる。動作に支障を来す前に洗浄せねば。
会計士は半分ほど吸った煙草を灰皿になすりつけると、どこか遠い目をして答えた。
「あいつは失敗作だよ」
ATSUSHIが不慮の事故によって用水路に落ち、完全に動作停止したのは翌日のことだった。