4 名前が出りゅ!出りゅよ! (sage) 2015/09/13(日) 21:11:54 ID:GqtiECQE
◆4
「好きだ」
唐突にYにこう告げられたのは、彼と共に働くようになってからひと月経ったときである。
当職の電子回路はまだ予測不能の事態に対処しにくい。即座に最善の解答を検索しはじめたが、うまいものが見つからない。
Yは続ける。
「引くかい? なにせ君は僕がホモであることさえ知らないからね。笑ってもいいんだぜ、僕は性的倒錯者なんだよ。
ホモで、デブ専で、出会い系で男を漁りまくって、それがバレて前の事務所に居場所がなくなった。
することもない時期、ふと見た同期の名簿で君に一目ぼれさ。そこで君の親父さんと接触して、この事務所にもぐりこんだ。ストーカーみたいなものさ。
ホモでデブ専で出会い厨でストーカー。どうだい、役満だろう?」
知らない単語が大量に出てくる。後で検索せねば。
言い終えるたYはしばし息を荒げて黙り込んでいたが、突然顔を上げると大声で笑い始めた。
これは当職にも理解できた。「自嘲の笑み、やけになって笑う」という、人間が極限状態において取りうる行動のひとつである。
となるとYは現在、激しい羞恥や後悔といった感情を抱いていることになる。先ほどの単語はそういった感情と結びつくのであろうか。
当職が考えていると、不意に真顔になったYが早口でこう言った。
「でもひとつ知っておいてほしいんだ。僕は君が好きなんだ……いや、もっと端的に言おう。君とセックスしたい」
セックスしたい。
すぐさまこれに対する適切な返答が見つかった。会計士と幾度も交わしたやり取りである。
「当職もナリ」
その晩、Yは当職の穴を3度利用した。会計士はこのところめっきり当職の穴を利用していなかったので、実にひと月ぶりの感触である。
Yの陰茎は会計士より些か大きく、精液はさらりとした感触であった。
烈しく突かれ、背後からの嬌声を浴びながら当職は考える。
穴が利用されているときの当職は、非常に回路が安定する。
これはいったいどういうわけであろうか。
考え続けるうち、不意によくわからないものがこみ上げる。
電子回路がパチパチとその答えを算出する。
そうか、わかったぞ。
これは「嬉しい」という感情に近いものなのだ。
Yの精を穴の中に注がれながら、当職はパズルのピースが埋まってゆく感触をおぼえる。
やはり当職とは、穴であった。