首都崩壊 (13)

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2 名前が出りゅ!出りゅよ! (sage) 2016/02/07(日) 03:02:34 ID:EaBf3tJ2

今の惨状を反映するかのように空には暗雲が立ち込める。
唐澤貴洋の集団が逃げ遅れた住民や、殿となって避難を援護する警官や自衛隊員を容赦なく引き裂いていく。
封鎖区域と安全区域の境界ではバリケードが築かれており、バリケードの外側からは戦車の火砲や重火器の弾丸が。空からは戦闘機から投下される爆弾が人間と唐澤貴洋の区別なく街ごと破壊していく。
その様子を洋たちは他の避難民たちと共に眺めていた。こうなるのも仕方のないことだと頭の片隅では理解している。それでも息子が傷つけられるのはやはり心苦しい。
肩を落とす洋の肩に山岡がそっと手を乗せたとき、近くのビルのモニターに初老の男性が映し出された。『政府首相代行、森公高』とテロップが下に写っている。
『国民の皆さま、今回の局地的災害と焦土作戦により港区では多くの人命が失われました。しかし、これは首都を守るための必要な犠牲であり、やむを得ない決断であったと……』
その時悲鳴が上がった。唐澤貴洋の一体がバリケードを突破したのだ。すぐに攻撃が集中するが、次から次へと後方から唐澤貴洋が際限なく湧いてくるためにやがて対処できなくなっていく。
唐澤貴洋が一両の戦車を腕で叩き潰したとき、その場から逃げ出そうと後ずさっていた群衆は一気に駆け出した。
武器を持っている者たちは勇気を奮い抵抗するが、多勢に無勢で次々潰されていく。
無意識のうちに洋たちはその場から全速力で逃げ出していた。だが、次の避難場所がどこなのか誰も知らない。
「港区は終わった。東京ももうすぐ……いや、首都圏全域かな?」
山岡が諦めた顔で呟くのを洋は聞いた。
「ああ、神様。これ以上ワシの息子に世界を滅ぼさせないでくれ」
洋は心の中で祈りながら機能を喪失した市街地を走り続けた。

終わり