コンパスの針は赤く錆びて (19)

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3 3/10 (sage) 2016/02/14(日) 21:53:38 ID:oD9hA9Ko

「なあ、K」と僕は再び呼びかけた。
「その前提で長い間考えてきたんだが、どうにも僕にはわからないんだ。きみの《その行為》には、どういう理由があるのかな?」

 Kの動きが止まった。彼は焦点の定まらない瞳を僕に向けた。それは僕というよりも、僕がいる空間全体を漠然と見ているような瞳だった。

「……僕には、そういったことが意味のある行為とは思えない」
 2本目の煙草に火をつけ、紫煙を吐き出しながら僕は言った。
「わかるかな。「行為」に対する「理由」が、僕にはみつけられないんだ。……なりより、痛いだろう?」

 Kはしばらく何も言わなかった。彼はどこか遠いところへと精神を漂わせているようだった。
 その沈黙は意味をもって作るような――つまり、なにかしら返答を考えるためのような、そういう沈黙ではなかった。
 ただ、そこにぐったりと横たわっているような沈黙だった。
 彼は考えているのかもしれない。考えていないのかもしれない。
 僕への返事の代わりに、ロリドルやSのアイスのことを考えているのかもしれない。昨夜の性交の残滓に思いを馳せているのかもしれない。
 もちろん何も考えてない可能性だってある。
 それでも僕は辛抱強く返答を待った。

「……儀式、ナリ」

 2本目の煙草がフィルター間際まで綺麗に燃え尽きてしまったころ、Kは口にした。