破裂しそうで (9)

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1 1/3 (sage) 2016/03/13(日) 11:39:14 ID:cAEKgUDo

 先端が張り詰めている、ぴんと硬くなったそれは激しいまでの自己主張を伝えてくる、毎度のことながら熟しきった果実みたいだなと、僕は頭の片隅、わずかに残った理性で考えている。
 ポケットの中につっこまれた小男の手が僕のそれに刺激をあたえつづける、荒い息、汗のニオイ、また別の液体のニオイ、空間に漂っていく。
 心拍があがっている、左胸に埋まった心臓がポンプみたいに血流を全身にめぐらせる、なんだか血管が破裂しそうな気分になってくる。
 でも当然血管が破裂するわけがない、破裂するのは僕の今ひどく硬くなっているそれにきまっている、その先端に決まっている、そいつときたら黄色がかった粘っこい液体を身勝手に噴き出しやがって、あとはぐったりするって塩梅さ、そうさ、いつものことなんだ。

 ドクドクと血液が体中をめぐる、一番の血流は僕の下腹部に集まっていく、そいつはもう充分張り詰めたはずなのに、まだまだといわんばかりに暴走して膨らみつづけてゆく。
 僕はなすすべもなくそれを観察するしかない、自分の体の一部を観察するしかない、結局のところそれを望んでいるのかもしれないけれど、ともかく呆然とした調子でそれを見つめている。
 快楽の波はどんな色をしているのかわからない、白いのか赤いのか透明なのか、あるいは空の色のようにうつろってしまうものなのかもしれない、でもとにかくひっきりなしにそいつが打ち寄せてきて、無法地帯に転がされた僕は蹂躙されている、そうして頭の奥底にひっかかった理性は押し流されそうになってゆく、いったい今僕はどんな表情をしているのだろう、知りたいような知りたくないような気分だ。
 小男が忍び笑いを漏らす、クスクスとくぐもった声が事務所中に響く、ああなるほど、僕は今相当な間抜け面をしているにちがいない。
 頬の垂れ下がった贅肉、4年間のごたごたで増えた贅肉、ストレスで痩せる人間と太る人間がいるらしいがこいつは間違いなく後者だ、その贅肉が男の笑みとともに揺れる、僕は刺激を受けながらそのさまを観察する、それはなにかに似ている、そうなにかに似ている、ああ思い出した、地震の初期微動、そうだ、そういう具合なのだ。