3 名前が出りゅ!出りゅよ! (sage) 2016/05/07(土) 01:15:38 ID:FoGpB7xY
「・・・、それで、えんそくさん、作戦はどうなんですか?とても成功するようには思えませんが。」
俺は直球で尋ねる。
「大丈夫です。ノアの方舟にでも乗ったつもりで安心してください。」
運転しながらえんそくさんが応える。何の返事にもなっていない気がする。
からさわ@無能さんはというと何か物思いにふけりながら窓の景色を見つめている。本当に大丈夫なのだろうか?俺にはこのハイエースがパトカーに思えてきた。
「二人共、今から人質が乗ります。話を合わせてくださいね。」
急な宣言に唖然とする。からさわ@無能さんに驚いている様子はない。一体どうなっているんだ?
車には運転席にえんそくさん、助手席に俺、後部座席にからさわ@無能さんという構図で座っていたが
ガチャ
という音と共に女性がからさわ@無能さんの隣に座った。人質が攫われにくるというのは全くもって理解不能だ。『飛んで火に入る夏の虫』と言うがこちらには虫をおびき寄せる火のような輝きはない。えんそくさんとからさわ@無能さんが俺をハブって何かを企んでいるのは確実だろう。やはりこのまま警察に突き出されるのだろうか?しかしそうならハイエースで警察まで向かえばいいだけだし、この女性の説明もつかない。
女性が入ってきてから無言で何分、何十分が過ぎた。
しばらくスマホを弄っていたので(悪い癖だから直したい)気づかなかったがオラ森とは逆方向のどこかにこの車は向かっている。けんまするとえんそくさんは言っていたがやはりどうするつもりなのだろうか?いろいろな不安が残る、いや、不安しかない。が、警察に突き出される前にからさんで1発できれば俺は本望だったのでえんそくさんに任せることに決めた。
「…、あの、山オカさん、紹介とかはしなくていいんでしょうか?」
女性が喋る。助手席に居るのに後ろを振り向いてマジマジと見るのは不自然なのでスマホの画面に反射して見える像でどんな女性か想像していたが声は若く、20代後半といったところだろうか。
…ん?今女性はなんと言ったのだろうか。『山岡』と言ったのか?
うじスレ民なら誰しも1度は憎み妬み羨む名前に脳が反応する。
俺の嫌いな名前のベストスリーも『ガラガラヘビ』『ぺんぺん草』『山岡裕明』である。
その『山岡』がなぜ今ここで?
俺は思わず振り向いてしまった。女性はスーツを着ていて、メガネをかけている。美人だ。
「………、予め話してあるので大丈夫ですよ。」えんそくさんが応える。
「わかりました。これは飲んでもいいんでしょうか?」女性は俺のことをチラリとも見ずにえんそくさんに話しかける。
座席にセットしてある小さな棚にペットボトルの緑茶がポツンと置いてあるので女性はそれについて尋ねたのだろう。
「構いませんよ。」
俺やえんそくさん、からさわ@無能さんの座席には飲み物はない。恐らくはえんそくさんが女性の分だけ用意しておいたのだろう。