475 啓蒙パンデミック 2020/04/21(火) 20:46:24.59 ID:jO7kA8cC0
数時間前――
コロナとは関係なく仕事の依頼が来ないので引きこもり生活をしていた三密弁護士・唐澤貴洋(42)は、他のものが自粛しているにも関わらず暇だから、と同僚の原田を誘い居酒屋にて盃を交わさせた
父から買い与えられた高性能マスクを息苦しいからと床にポイ捨てしながら特上エビ天を頬張る、たまらない
ちょっと味が薄いかな?と天つゆをドバっとかけもう一口かじりビールを煽る
その様子を見て唐澤さん、と話を切り出すは原田であった
手には唐澤の捨てたマスクが握られており、その顔は食事中にも関わらず何重にもマスクを着けている
まるで隣にいるうんちクラスター地帯(42)を警戒してるようだった
「今殆どの人が外出を控えて感染防止に勤しんでるのに恥ずかしくないんすか?もしこんなの撮られたら俺までクズどもに叩かれるというのに……」
マスクを手でずらし、天ぷらを食べづらそうにかじり、咀嚼する
その顔はマスクの上からでもわかるくらい苛立ちに満ちており、酒も入ってるからか今にも堪忍袋の尾が切れそうだった
せっかく誘ってやったのに愚痴をこぼすなんて何様のつもりだろうか
もしここに山岡たちがいたらもう少し愛想を良くしてくれるぞ、と根拠のない自信を持ちつつジョッキのおかわりを頼む
店主もマスクを着けているがやはり目の前のデブをこころなしか睨みつけていた
またか、どこもかしこもコロナ・コロナ・コロナと自粛を求める態度を押し付けてくる
父親すら黙って呑み代を出せばいいものをやたら家に居ろと怒鳴るから殴りつけて金をぶんどった
お前みたいなデブで不摂生な奴が真っ先にコロナで死ぬんだよ親不孝者が
せっかくの飲み会も険悪なままで終わり機嫌は最悪だ
呑み足りない、と父の秘蔵のワインを開けて瓶ごとかっくらう
ぶはぁ、と息を吐くも苛立ちは収まらない
ここまで腸が煮えくり返ったときにはSNSに吐き出すと決めていた
そんなにコロナが怖いなら俺から直々に講釈をたれてやる
それからの行動は早かった
テキストを開き自分が知る限りの情報を織り込んだ注意喚起文を作成し始めることにした
中学時代を思い出す、エイズも恐怖心を植え付けることで防止することができると説き、皆が言い返せないのか口をぽかんと開けたのを
コロナも同じようなものなのだから上級国民である当職が発信すれば収束待ったなしであるのは明白だ
そうして筆がノッてきたのか文が完成すると同時に自らのツイッターに投稿した
長谷川とかいう知らんガキの誕生日がどうとかクソリプを送られたのでブロックして、眠くなったので床に就いた
――翌日
頭がガンガンする
毒親め、悪酔いする安物のワインなんて掴ませやがって
香りも薄いし酒じゃなかったら吐き出すところだ
駄目だ、気分が悪い……