495 名前が出りゅ!出りゅよ! 2020/08/08(土) 02:47:44.47 ID:FKyZIiJJ0
「ええ」
複雑な感情は消えることなく、諸作業をそつなくこなした。
「……以上ですべて終わりです。お疲れ様でした、納期をお待ちください」
「ああ、よろしくお願いします」
商談が終了したので、町工場の応接室を出る
。古いけれども掃除が行き届いた廊下をチンフェの後ろに続いて歩いていく。
スリッパの足音が二人分響いた。
チャンスは今しかない、と覚悟を決めて、踏み込むことにした。
「あの、長谷川雄太さん、いや、長谷川亮太さん」
「……!」
一瞬方が震えるのが見て取れた。その不細工な顔は真っ赤に染まり、
首筋には脂汗も確認できた。
「なぜその名前を知ってるんだ」
気弱そうな口調から一変、かつてのニコ生で用いていた、
チンフェの名にふさわしい、
どこか下品に感じる独特な口調に変わった。
若干の感動を感じたが、
ここで油断して発言を間違えるわけにはいかない。
「私、国士舘出身でしてね、あなた、案外有名でしたよ」
かつてのチンフェのように嘘をついてやった。
ちなみに私は国士舘大学出身ではない。
自分語りは嫌いなので大学は伏せさせていただく。