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881 名前が出りゅ!出りゅよ! 2022/08/06(土) 09:18:23.93 ID:ME4gZqFE0

閑静な住宅街の公園で、たかひろ少年は俯いてベンチに座っていた。弟が生まれてからというもの、家族は誰もたかひろに構ってくれなくナリ、日中は仕方なくこうやって時間を潰すのであった。
夏休みなんて早く終わってしまえばいいのに。
「ぼく、ひとり?」
突然の声に驚いて顔を上げると、目の前に若い女性が立っていた。
「隣に座ってもいいかな」
こくり、と頷くと彼女は僕の左側に座った。
怪しい人だったらどうしよう。逃げたほうがいいのかな。僕、誘拐されるのかな。
緊張と困惑で固まっていると、その女の人は言った。
「ねえ、アイス食べない?ちょっと溶けちゃったけど」
どう答えたらいいか分からなくて、僕は恐る恐る頷いた。
女の人はけっこう溶けちゃったーと笑いながらガリガリ君をくれた。
でも知らない人から食べ物をもらっても食べちゃいけないってお母さんが言ってた。どうしよう。
「毒なんか入ってないよ、ほら」
女の人はアイスを袋から出し、僕の方へ差し出す。
断るのも悪い気がして、僕はアイスを食べ始めた。
「ぼく、名前は?」
「……たかひろ」
「たかひろくんは近くに住んでるの?」
「……うん、あれが僕の家」
「あそこなんだ、いい家だね」
そんなことないよと言いかけたけど、言えなかった。
「えっと、お姉さんは……どこに住んでいるナリか?」
「私?どこだろうね」にこっと笑ったがその顔がやけに悲しげで反応に困った。
その時、溶けたアイスの塊が僕のズボンに落ちた。
どうしよう、お母さんに怒られる。
「あらら、あそこで洗おっか」
僕はお姉さんに連れられ公衆トイレに入った。頭の中ではお母さんの怒った顔が浮かんでは消え、浮かんでは消え、女子トイレに入ったことも気付かなかった。