591 がん患者さん 2016/06/27(月) 20:14:06.42 ID:DBMXlo30I
高層ビルの一室。
打ち付けられたスマートフォンが、大きな悲鳴をあげる。
破片の間から覗かせる画面には、「遺体入りスーツケースか、東京湾につながる運河で発見 」とのニュースが。
「………なぜ、ニュースになっている?」
そう尋ねられた男は言葉を発さない。額に脂汗を示すばかりだ。
それに対して、会長は声を荒げもしなかった。
数分後、会長の無言の詰問に押され、男はついに喉から声を搾りあげる。
「もうしわけ…ございませんっ…」
全くの見当はずれだ、と会長は溜息もつかない。
「私が聞きたいのは謝罪ではない。」
呆れたような仕草で立ち上がり、部屋の中を闊歩する。
「すまない。こちらの聞き方も悪かったようだな。」
「……なんだこの"スーツケース"は?なぜ"運河"で発見されている?」
詰問された男は目を見開く。
「私は”確実に”沈めろと言ったはずだ…」
会長それは、と口を開く男を制する。
「いや、いや、いや、もういい…間違えることは良くあることだ。」
男は顔を上げる。その瞳には、僅かな打算の希望がある様に見えるかもしれない。
「……その代償もな。」
大きな悲鳴があがる。今度は彼から。