恒心今昔物語 (20)

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10 がん患者さん 2016/10/14(金) 21:40:18.38 ID:t0CbAqGu0

詩詠みて許さるる事

今は昔、一橋を出でにし人の都の政をしたため行ふ間、弁護士のしどけくおはしましければ、「召しにやりて戒め奉らん」と申して、重く戒め参らせんとて召し奉るなりけり。
「率て参りたり」と人の申しければ、鞭を設けて、打つべき人設け奉りて、先に人二人引き張りて出で来たるを見れば、総身ゆゆしく肥え、いと手指太くておはします唐澤貴洋なり。

見るに、打じ参らせんこといとほしく覚えければ、何事かにつけてか許し奉らんと思ふに、しれものとのみこそ見えたまへば、得ず。
過ちどもを片はしより問ひ仕るに、ただ破可弁を高家にてのたまはしをりたまふ。
いかにしてこれを許し参らせんと思ひて、「あないみじき盗人におはするかな、歌は詠みたまはんや}と申せば、「●はい。」と仰せたまひければ、「さらばものせさせたまへ」と申されて、程もなく、御(震え声)にて打ち出だしたまふ。

 生き死にの 洋(うみ)に生まれて ひとなるに むちをみるめぞ やさしかりける

と仰せければ、いみじうあはれと存じて、唐澤貴洋にておはしまするによりて誅せんとするを、感じ許し奉りて、不意の怒涛の太刀筋にて弑し奉りたれば、無事薨ぜられたまひけり。人はいかにも情けはあるべし。
なほ和蘭森要塞は間にあはぬとかや。