恒心今昔物語 (20)

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4 がん患者さん 2016/07/02(土) 21:38:37.21 ID:H/zUqq5K0

 尊師殿(唐澤貴洋)がまだ若くていらっしゃった時、弟の甲信殿(唐澤厚史)と一緒に舟で旅をしていたが、嵐によって(島に)打ち上げられ、船が壊れてしまった。始めの何日かは島に生えている植物や船に少し残っていたもの(=食料)を召し上がって飢えを凌がれていたが、三十三日目についに食料がすこしも島になくなってしまった。
 尊師殿と甲信殿はしばらく海岸にお座りなされていたが、しばらくすると(尊師殿が)立ち上がって何歩か動き、大きな木の実の殻を持ち上げなさった。尊師殿は
「厚史、お別れだ」
などと一言二言おっしゃられるとすぐ甲信殿の頭に殻を勢いよく当てたので甲信殿はすっかり意識をなくしてしまった。尊師殿も病気になったように元気をなくされていたが、何時間かするとおそるおそる甲信殿の身体を殻を使っていくつかの大きなかたまりに分けなさったそうだ。
それから四日ほどして出龍殿(唐澤洋。尊師殿の父親)がいらっしゃり尊師殿は危うく死ぬところを助かったが、いったい、どのようにして生き残られたのだろうか。ある人の言うところによれば、尊師殿は甲信殿の肉を脚などから順々に召し上がられたそうだ。小西殿や至田殿がおっしゃるには
「京に帰って出龍殿などと話をしながら『生きるため、仕方なかった』と申していた」
などということだが、なんとも神仏を知らないかのような行いをしたことであるよ。