4 野に咲く名無し@転載禁止 2025/03/03 (月) 17:01:30.575 ID:L9HSJB6XK主
楽しく遊んでいる間に、もう太陽が沈む頃。
ぷゆゆ達も帰り始め、辺りは静かになっていく。
「楽しかった!でも、そろそろ帰らないとかなぁ」
「そうですね。我が家が待っています」
「オラも疲れたから、一緒に帰ろうっス」
三人は山を降り始める。
しかしただでさえ夕方で暗い中、正しい帰路がわからず右往左往。
そうこうしているうちに、辺りはすっかり暗闇に。
「ねえ、暗くなってきたよ…」
「そうっスね…もう来た道もわからないっス」
「困りました、これでは進むのも危ないですね。
…これは俗に言う、遭難ってやつでは」
遭難。その事実が、三人に重くのしかかる。
「…じゃあ急いでおりなきゃっ」
「待ってください。この暗闇の中での行動は危険です」
「うう…あっうんちゅさん、さっきみたいにとんでもらうのは…」
「もうヘトヘトっス〜それに、寒くて体がこわばるっス」
「まだまだ寒い時期の山です。このままでは三人とも凍えてしまいますね」
「どうしよう、こわいよ…」
「幸い農園の山なので、安全は確保されています。
ここで朝を待つか、頂上を目指し助けを求める手もあるでしょうか。でも皆疲れてますし…
ううっ、まずはこの寒さをどうにかできれば良いのですが」
その時だった。
近くの草むらから、ガサガサと音がするのが聞こえる。
「わわっ!」
「誰かがいるのかもしれません。行ってみましょう」
三人が向かってみると、そこには誰もいない。
だが、地面を見ると何かが置いてあった。
「これは、カイロっスか!?
しかもたくさんあるっス」
「これはまさに渡りに船ですね。こんなに都合良いことが…おや?」
ネズミはとても耳が良い。
微かな音がした方をアルは振り向く。
ほんの一瞬だが、誰かの姿が見えた。
「あれはまさか…でも、とりあえずこのカイロを使って暖まりましょう」
「わ〜い!ぽかぽかだ」
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気を取り直して、早速3人は暖を取り始める。
しかし問題はそれだけではないようだ。
「これで多少は寒さを凌げますが、やはり夜を越すには不十分です。
頂上へ向かうのに賭けるか、または暖を取る良い方法があれば良いのですが」
「あの、これって…あったかくないかな?」
ぴりおが見せてきたのは、先ほど景品でもらったコート。
彼には重いはずだが、ここまで大事に引きずりながら持ってきたようだ。
「…それは良いですね。使ってみましょう」
アルはそう言うと、辺りから木の枝を集めてくる。
器用に枝とコートを組み合わせると…テントが完成した。
とても小さいが、この三人にとってはぴったりのサイズのようだ。
「わぁ〜すごいや!」
「でもでも、なんか風で吹き飛びそうっスね」
「確かに…そうだ、そうしたらこうしましょう」
そう言って、アルが手に取ったのは…
「あっ、岩くん!!」
「この子を重石にするのはどうでしょうか。
きっと良い仕事をしてくれますよ」
「しごとかぁ…うん。おねがいする!」
岩くんを使い、即席テントを無事に固定することができた。
「皆体力も尽きてます。むやみに動かず、一旦休息を取るのが得策ですかね…」
「腹ごしらえしておいてよかったっス」
「ぼく、ねむくなってきたよ…」
「オラもっス…」
疲れきった三人は身を寄せ合いながら、眠りに落ちるのだった。
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「むにゃむにゃ…はっ!」
「おはようございます。ひとまず皆無事なようで良かったです。
さて、帰路を探すとしましょうか」
「あ、あれを見るっス!」
うんちゅが指さした先には、山の下から上まで続くあの大きなひな壇があった。
これを辿っていけば無事に下まで降りられそうだ。
「こんな近くにあったなんて…暗いと気づかないものですね」
「よかった…帰れる!」
「もうすっかり元気モリモリっス。またオラが運んでもいいっスよ〜」
「ほんと?いきたい!」
「ならば、私もお願いしましょう」
再びうんちゅに揺られながらの帰り道。
アルは遠ざかるひな壇を見つめ、思いを巡らせる。
「…雛祭りには幸福や息災の願いが込められていると聞いた事があります。
人間というものはやはり不思議で、面白いものですね」
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「わーい!こわかったけど、みんなですごせて楽しかったよ!」
「私も貴重な経験になりました。もっとも、次回からは注意を払うべきですが…」
「オラも楽しかったっス!アルとぴりおに岩くん、本当にありがとうっス」
「またあそぼうね!
あっ、そういえば、これどうしよう…」
ぴりおがここまで大事に持ってきた、あのコート。
やはり、小さい彼らの身には余る代物だ。
「リサイクルショップなんかはどうでしょうか。多少ですが、お金になります」
「リサイクルショップかぁ…そうしよう!
だれかがもらってくれたらいいな〜」
「そうですね…それに、これを欲しかった人がきっといるはずです」
あの夜、一瞬アルが見た姿。
それは間違いなく…麦わら帽子をかぶっていた。
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数日後のこと。
「いらっしゃいませぷゆ……っ!?」
とあるリサイクルショップを訪れる、誰かの姿があった。
「その''ふさふさ''したコート、買わせていただきますよ」