2 野に咲く名無し@転載禁止 2025/08/24 (日) 23:38:30.091 ID:ch-F5xDb3Rw2主
数時間後。
幸いにも、三人は金品を奪われただけで、大事には至らなかった。犯人たちが去った後、彼女たちは警察への連絡もそこそこに、沈痛な面持ちでSTARRYのロビーに集まっていた。そこに、恐る恐るという様子で、ぼっちが姿を現した。
「あ…あの…み、皆さん、ご無事で…」
その声に、三人の冷たい視線が突き刺さる。いつもは温かいはずのその場所が、今は絶対零度の空間と化していた。
最初に口を開いたのは、虹夏だった。いつもは太陽のように明るい彼女の表情は固く、その声は失望の色を隠せない。
「…どうして、逃げたの。ひとりちゃん」
「あ…え…そ、それは…」
「怖かったのは、ひとりちゃんだけじゃないんだよ?私たちだって、すっごく怖かった。なのに、どうして私たちを置いて、自分だけ逃げたりしたの…?」
静かだが、有無を言わさぬ厳しい詰問。ぼっちは何も答えられない。
続いて、目に涙を浮かべた喜多が、震える声で叫んだ。
「ひどいです、後藤さん…!私、本当に怖くて…!なのに後藤さんは、私たちを見捨てて…!信じてたのに…!」
承認欲求の強い彼女にとって、仲間からの「見捨てられた」という事実は、何よりも心を抉る刃だった。
そして、これまで黙って壁に寄りかかっていたリョウが、静かに顔を上げ、ぼっちを一瞥した。その瞳には、侮蔑とでも言うべき冷たい光が宿っていた。
「……サイテー」
たった一言。しかし、その言葉はどんな罵詈雑言よりも、ぼっちの心を深く、深く突き刺した。
「ご…ごめん…なさい…ごめんなさい…」
床に崩れ落ち、ダンゴムシのように丸くなるぼっち。だが、その謝罪に答える者は誰もいない。信頼、友情、そしてバンドの絆。その全てに、今、くっきりと亀裂が入る音が、STARRYの重い空気の中に響き渡っていた。
おわり